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私の後に教室に戻ってきた2人は、私に話し掛けてくることはなかった。茜は、私のすぐ後ろの席だが、何のアクションも起こさない茜を、私は逆に怖く感じていた。
そんなこんなで、茜と萌衣のことが気になって、午前中の授業など全く頭に入らず、それに、授業の合間の休み時間も自席から動くことなく過ごし、あっという間に昼食の時間を迎えた。
…なんであんなこと言っちゃったかな、私。早速後悔の念に駆られる私。
茜に声を掛けるべきかどうかを迷いながら、昼食のお弁当を鞄から取り出した。すると、茜が立ち上がる音が聞こえ、チラリと見ると、茜は萌衣を誘って教室から出ていった。私は溜め息をついた。いつもなら、3人ときどき拓海も入れた4人で食べていたが、完全に無視のターゲットに置かれた私は、初めて孤独な弁当を食することになりそうだ。
孤独な食事…自分が好きなようにリラックスして食べられる利点もあるかもしれないけど、私はやっぱり皆で食べる食事の方が自分に合ってるなとしみじみ感じた。
仕方なく自席でお弁当を袋から取り出すと、「波音!」と私を呼ぶ声がして教室の入口に視線を向けると、拓海が不思議そうな表情をしながら、こちらに向かってきた。今は、この場面を茜たちに見られたくないため、拓海には来てほしくなかった。
「どうしたんだ。今日は梶原(かじわら)たちと食べないの?」
「今日はちょっと…。」
「ははぁん、何かあったな!」
拓海はニヤリと笑みを浮かべながら、私の前の席の椅子の向きを変えて、私の真ん前に座り、私の机の上でお弁当を開封し始めた。
「ちょ、ここで食べるの?」
「何だ、何か問題あんの?」
「…いや、まぁ。」
拓海は、普段の私とは違う雰囲気を感じ取ったのか、視線を逸らした私の表情を覗き込んできた。
「波音、俺は何があってもお前の味方だ。」
拓海はそれだけ言うと、弁当の蓋を開けて、卵焼きを頬張った。
「…ねぇ、タク。」
「何だ?」
「タクはさ、好きな人がいるの?てか、もしかして付き合ってる人いるとか!?」
「…お前に隠して、そんなこと出来ると思うか?」
拓海は冷静に答えた。
…確かに。毎朝一緒に登校して、昼もよく一緒に食べてるし、休日だって部活ばっかり、たまに無い時は私と遊ぶし…普通に考えれば無いか。ていうか、私と拓海って、端から見れば付き合ってるって思われるくらい一緒にいる気がするんだけど。
「波音?大丈夫か?」
「え、あぁ、うん。」
「やっぱり何か変だな。あれか、やっぱり昨日の件か?」
「…ううん、違うの。私がタクにフラれたのは私の問題だ…」
「え!!波音、フラれたの!?」
私の言葉に被る声に、まさかと思って後ろを振り向くと、茜が固まって立っていた。
…またまた最悪な展開かもな。
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