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「ちょっと、色々とどういうことなのよ!」
「茜、ちょっと声が…。」
茜の大きな声で、教室内にいる人たちの視線をまたまた独占してデジャブを感じている私は、とにかく茜に落ち着いて欲しかった。
「あ、ごめん。」
茜は声量を落として、私と拓海の真ん中の位置に椅子を持ってきて座った。
「たまたま聞こえちゃったのよ。で、2人に何があったのよ。」
拓海も、しまった!という表情を浮かべていた。
「…聞こえてたなら、そのままの話よ。」
「え?じゃあ、波音の告白を拓海くんが断ったってこと?」
茜が拓海に視線を向けると、拓海は箸を置いて、コクンと頷いた。
「…なるほどね。そりゃ、萌衣の件も複雑だわな。」
茜は納得するように頷いた。
「あの、茜。萌衣は?」
「あ、そうだ!箸忘れちゃって、取りに来ただけなんだ。ごめん、戻るわ。」
茜はそう言って立ち上がると、私の真横を通るときに私にだけ聞こえる声で耳打ちした。
「萌衣にはまだ黙っておくから。波音も、萌衣の件を拓海くんには黙っておいてね。」
茜は足早に教室から出ていった。
「…最後、梶原何だって?」
「え、ううん。別に大したことじゃないよ。」
とりあえず茜とは元の関係に戻れそうな気がして、少し気持ちに余裕ができ、ようやくお弁当を食べようと蓋を開けた。
「おっ、うまそ。これ頂戴!」
拓海は、いつもの如く、私の弁当箱から勝手に焼肉を一切れ奪い取った。
「もう、また。」
美味しそうに食べる拓海を見て、私は自然と微笑んだ。
やっぱり食事は、誰かと一緒に食べるのがいいな。
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