幼馴染みへの恋敵

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海岸に着くと、萌衣は小石で埋め尽くされたエリアを越えて、砂浜に辿り着くとそのまま仰向けに寝転んだ。 「萌衣!砂で汚れちゃうよ!」 「あっつい!」 萌衣は起き上がって身体についた砂を一旦手で払いのけると、ラケットケースを枕にして再び寝転んだ。 「波音ちゃんもおいでよ。」 「萌衣がこんなことするの意外だなぁ。」 「フフフ、たまにはいいでしょ。」 萌衣は私に隣に寝転ぶように、砂浜をパンパンと叩いた。私は笑いながら、同じくラケットケースを枕にして寝転んだ。 その瞬間、私の視界は突き抜けるような青空が占領した。 「うわぁぁ、綺麗な空だね。」 こんな風に空を真上に見るなんて、いつ以来だろうと考えた。そして、バックミュージックには打ち寄せる優しい波の音。まさに夏を堪能している、私は眩しい陽射しに手で陰を作りながら、空を見つめ、大きく息を吸った。 「いいよね、夏って。私、1番好きな季節。」 「それも意外。萌衣はなんだろう、読書好きなイメージがあったから秋かなぁって勝手に思ってた。」 「フフフ、読書も嫌いじゃないけど、普段はゲームばっかり。銃で人をバババババって撃ち殺しまくり。」 「ハハハ、マジ?…萌衣、もっと自分出してけばいいのに、勿体ない。」 「茜ちゃんには敵わないもの。それに、私は1人でいる時だけ、自分でいれればそれでいいの。波音ちゃんは?普段、私たちに隠してる一面あるんじゃない?」 「…どうだろう。私は、意外と臆病…かもね。周りからの評価を考えちゃったりさ。」 「フフフ、それも意外かもね。」 私たちは、ずっと空を見つめながら他愛も無い話を続けた。 波の音に加え、心地よい風が私に眠気を誘ってくる。 「…波音ちゃん。拓海くんのことなんだけどさ。」 眠りそうだった目を擦り、萌衣に視線を向けると上半身を起き上がらせていて、じっと海を見つめていた。私も慌てて上半身を起き上がらせた。 「…タクのことか。」 そういや、それがメインの話だったんだ。 「私、拓海くんへの告白はもうちょい待つことにする。」 「…どうして?」 「なんか、私はまだ波音ちゃんには敵わない気がするの。それに…」 いやいや、女子としては、あなたの方が何倍も可愛いし、魅力的だよ。 そう思ったけど、とりあえず黙って萌衣の話を聞くことにした。 「拓海くんも今はサッカーで頭いっぱいだろうし。邪魔はしたくないもんね。私たちも大会に向けて頑張らないと。」 萌衣は、私に手を差し出した。 「拓海くんのこと諦めるわけじゃないわよ。波音ちゃんは私のライバル。それからバドミントン仲間で、親友。…なんだか不思議な関係ね。」 「ハハハ、ほんとだね。」 私は萌衣の手を握った。 明後日から夏休み。部活に遊びに恋愛に…充実した夏休みになるといいなぁ。
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