幼馴染みへの恋敵

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「ご、ごめん。俺は、波音(なみね)のことは 幼馴染みとしか考えられなくて…。」 私は、呆然と立ち尽くした。 ほぼ間違いなくOKの返事を貰えると確信めいたものがあったし、きっと今の私、今まで拓海(たくみ)には見せたことのない表情をして告白したんだろうなと思うと、恥ずかしさに耐えられなくなり、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。 拓海は、今も申し訳なさそうに何かを私に言っている。けれど、私の耳には届かない。それは、私に問題があるのか、それとも一定の間隔で打ち寄せる波の音のせいなのか、私にはわからなかった。 私の頬には自然と涙が伝っていた。それを見た拓海は焦っているようだけど、私はざまぁみろと思って、後ろを振り向いた。 波の音が聞こえる。7月の陽射しは、容赦なく私たちを照り付け、皮膚に夏を刻んでいく。 中学2年生にして、一世一代の決意の如く、勇気を振り絞った私の戦いは敗戦した。涙が溢れないように空を見上げた。雲ひとつない青が突き抜けるような空。憎いくらい気持ちのいい夏空だった。 「波音、その…」 「もういいよ。タクは悪くない。私の話聞いてくれてありがと。」 私は、なんでお礼なんて言ってんだろ。馬鹿だな、私。 「また明日、朝よろしく!」 振り返って満面の笑みで言ってやった。単純な拓海は、その笑顔を見て安堵の表情を浮かべた。私は手を振って砂浜を走り去った。 さっきの笑顔が本心の笑顔だと思ってる拓海も馬鹿だ。でも、私の日々から拓海が消えることだけは、考えられない。 やっぱり私も馬鹿だ。
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