幼馴染みへの恋敵

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無情にも、時間は止まってくれない。いつも通りの間隔で一定に進む時間は、あっという間に夜になり、1階からは、夕飯だよ、と呼ぶ母の声が聞こえる。 何も食べたくないなぁ。人間って、食べなくても何日生きられるんだろ。痩せるかな。そんなくだらないことを、気が付けばスマホで調べていた。 「ふーん、水飲めば結構生きられるんだ。」 意味のないことを1人呟く。そして、痩せるというワードが影響して、姿見の前に移動し、自分の全身を見てみる。 「…別に、太ってはないよね。」 一応、バドミントン部に所属し、毎日汗だくで練習しているんだから、太ってる部類には入らない…はず。 でも、そう言えば拓海の好きなタイプって聞いたことないな。好きな芸能人は何度か聞いたことあるけど、どれもタイプ違って統一感ないんだよね。昔っから、そういう性格で、何するにも中途半端だし…って、何でまた拓海のこと考えてるんだろ。 あーあ、明日、どういう顔して朝会えばいいんだろ。 「波音!いい加減にしなさい!」 母の怒号で、我に返った私は慌てて、部屋を飛び出した。 夕食中、私が箸の進みが遅いためか、心配そうな母と妹の視線が少し気になるが、反応すると理由を話さないといけなくなるだろうから、気付かないふりをしていた。 「あ、波音。そう言えば、今日たっくんのママに会ったんだけどさ。」 「ブーッ!」 咄嗟に飲んでいた麦茶を吹き出した。もろに顔に受けた母は、静かに台ふきんに手を伸ばして顔を拭き、じっと私を見つめた。 「…ご、ごめんなさい。」 これは流石に無視出来ずに謝るしかなかった。と、なると… 「何かあったの?何か変よ、今日の波音。」 ほら、きた。そして、左隣に座っている5歳になる妹の視線も痛い。未就学児らしく遠慮というものが全くなく、じーっと私を見続けている。 「…ちょ、ちょっと、部活で練習試合して、嫌いな奴にズタボロに負けちゃっただけよ。」 「嘘おっしゃい。今日あなた部活行かなかったでしょ!?たっくんのママから聞いた話はそれよ。あなたとたっくんが歩いてるのを見たって話。」 マジか、早く言ってよね。嘘が1つバレたなら、その上に嘘を塗り重ねても、それはすぐに剥がれ落ちるだけ。私だって伊達に10年以上生きていない。 母の視線が鋭くなったのを感じた。
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