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部屋に着くなり、大の字でベッドに飛び込んだ。
「あーあ、予定だと今舞い上がってるはずだったんだけどなぁ。…ん?」
ベッドに置いてあったスマホが震えているのに気が付き、手に取ると、拓海からの着信だった。私は何て言って出たらいいのかわからずに、震えるスマホを握ったまま考えていた。すると、スマホの振動は止み、私は画面を確認した。
「…え?20回も?」
拓海からの着信回数を見て思わず起き上がった。すると、またスマホが拓海からの着信を知らせ震えだした。
深呼吸をしてから通話ボタンを押し、スマホをゆっくり耳に当てた。
「…もしも…」
「波音か!?」
私の声と被った拓海の声は震えているように感じた。
「…タク、ごめん、電話出れなくて。」
「ううん、俺こそごめん、しつこく電話掛けて。家に帰って、ちょっと考え込んじゃってさ。」
「…何を?」
「俺たちさ、親同士の付き合いから、産まれた時からしょっちゅう一緒に居て、何て言うか…居るのが当たり前だったろ。」
「うん。」
「俺は物心ついた時からの記憶はそれなりに覚えてる。その記憶の半分以上は波音なんだ。」
私が拓海の記憶の半分以上を占めている。素直に嬉しかった。もしかして、大逆転劇がある?と期待すらしてしまっていた。
「うん、私もだよ。私もいつもタクと居た記憶ばっかり。」
「…俺たち同い年だけど、俺はお前を守る存在になりたい。」
え?それって、そういうことだよね。自分なりの解釈で、勝手にテンションはうなぎ登り状態だったが、表には出さない様に取り繕うと思った。
「私を守ってくれるの?」
「あぁ。…妹みたいな感覚なんだ。」
…妹?あ、そっか、そういうことか。なるほどなるほど、あぁ、また勝手に自分に都合いいように解釈して…ほんとに馬鹿だな、私。
「…何が言いたいの?」
絶望を怒りに変換したくなり、完全に声のトーンが変わっていた。人の気持ちを弄んでる、拓海はそんな人間じゃないことを知りながら、自分を正当化するために乱暴な解釈をして、拓海を悪くしたかった。
「だから…波音に居なくなってほしくはなくて…その、上手く言えないんだけど…」
「もういいよ。女心全然わかってない。」
そう言って通話を一方的に終了して、スマホの電源を切ると、そのままベッドに仰向けに寝転んだ。
「…タクの馬鹿。余計、明日会いづらくなったじゃん。」
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