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少し先に雲の切れ目が見えて来る。
(あそこ! 地面が見えるでしょう?)
頭に響く愛夢の声に頷いて、身体を捻るとその切れ目に飛び込んだ。
雲の回廊の先、緑の大地が見える。私は回転しながら回廊の出口に向かって急降下していた。
あっと言う間に雲の下に出た。その瞬間、緑の草原に覆われた外輪山、そして中央の盆地とその真ん中に聳え立つ火山が見えて来た。
「あれはカルデラ……。阿蘇山……?」
私は自分の記憶の中にある風景を思い出していた。
(見て、あそこ……)
愛夢のイメージが示す先、緩やかな起伏が連続する草原の一部が切れて人工的なコンクリートで覆われた外輪山の上の展望台に、一人の男性が立っているのが見える。
彼を遥か下方に見降ろす。彼は上空を見上げていたが、私に気付いたのか右手を振っている。
私は彼を中心にゆっくり回転しながら降下して行く。
そして彼の目の前に緩やかに両足で着地した。
彼が満面の笑顔で私を見つめてくれる。
「やあ、愛理、そして愛夢。待ってたよ」
私は大きく頷いた。
「うん、航太と翔太。私達も逢いたかった……」
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