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序
富山県南砺市にある山間の地域 五箇山。
古くは源平の合戦で敗れた平家の落人が隠れ住んだとされ、合掌造りや民謡といった歴史と文化が育んだ静かな山間の里。
宮崎琴美は地元 五箇山にある県立高校を卒業し、東京の大学へ進学、そのまま東京で就職。
けっして田舎が嫌いな訳では無かったが、地元を離れ、気がつけば30歳、独身のOL。
そんな彼女に転機が訪れたのは年の瀬だった。
祖父が倒れた、、との知らせを受け、急ぎ新幹線で富山へと向かった。
東京駅から1時間余り、次第に北国の様相になって行く車窓を眺めながら、祖父との思い出が頭の中を駆け巡る。
母方の祖父、中川藤三郎は五箇山を代表する民謡 麦屋節を継承する保存会において、長きにわたり三味線の奏者として舞台に立ち、若い頃は民謡ブームもあり、歌い手として、有名な会社からレコードを出すほどの名人だった。
彼女は祖父の弾く三味線の音色に合わせ歌う事が大好きだった。
そんな祖父の影響もあり、高校に入ると郷土芸能部に入部し、文化部の甲子園と呼ばれる総文祭 郷土芸能部門で日本一になり、国立劇場で歌ったのが今でも忘れられない思い出だ。
日本一になった時、祖父は自分の事の様に頬を緩め喜んでいた。
しきりに、携帯の中に入っている若かりし祖父の唄声を聴きながら、お祭りの時に祖父と撮った写真を眺めると心が押し潰れそうになった。
「もうすぐだから頑張って、、、」
白く輝く山々に、祖父を思い浮かべると涙が溢れ出す。
新幹線を降り、改札を抜けると弟 和喜の姿があった。
「姉ちゃん、早よ!」急かされる様に、弟の車に乗せられると、雪の降る中病院へ向かったのだ。
「琴美、早かったな。」病室の前で父 喜一と合流した。
「和喜が飛ばすんだもん。本当、怖かった、、、でお爺ちゃんは??」
宮崎家の家族は、父の喜一、母の明美、そして2つ年下の弟の和喜。
父 喜一もまた、日本最古の民謡と言われる五箇山の民謡、こきりこ唄の歌い手だ。
「お医者さんが言うにはギリギリやって言うとるけど。。」
いつもは明るく飄々としている父の顔が曇っている。
「とりあえず、入って声かけてあげられ」和喜に促され、病室に入ると祖母 多美の姿があった。
「琴美、遠いのに、よく来てくれたねぇ。ほら、アンタ、琴美が来てくれたよ。」そう言い、彼女を椅子へと促した。
琴美
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