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琴美と剛志はただの幼馴染み、ではありませんでした。
高校生、お互い初めての彼氏と彼女。
どちらが告白したとかではなく。お互いに惹かれあった彼女たち。もちろん周囲は筒抜けでした。
だからか祖父も、次第に剛志の事を孫のように可愛がるかのようになりました。
しかし、琴美が東京の大学へ進学すると決まった時、、「お互い重荷になるやろ。向こうで頑張れや。」そう言いながら剛志はムスッっと素っ気ない表情で別れを告げました。
もちろん、琴美は「待っててよ!絶対帰って来るから!」っと叫びましたが彼の心は揺るぎませんでした。
その日も今日のように、律子に話を聞いてもらいながら、この部屋で涙しました。
以来、2人は別々の道を歩んでいます。
青春時代の淡い恋、、っと言ってしまえば簡単ですが、琴美の心には今も彼しかないままこの歳を迎えたのかもしれません。
同窓会も何度かありました。しかし、琴美が来るっとなったら、剛志は何故か顔を見せません。
琴美が帰省した際に偶然見かけても素っ気ない彼、「いい人が居るのかな。。」そんな漠然とした思いで今日まで過ごしてきました。
「剛志、腹割って言わんけど。今日も事務所来てアンタの爺ちゃんの事、気にしとったよ。アンタが帰って来たら賑わしなるわ〜」っと戯けてくる律子。
「何言ってんの、、まだ帰ってくるっとも言ってないのに。だいたい剛志、もう相手居るんじゃないの?」照れながら浮かんだ言葉に「居らん。ぜーったい居らん。恵梨さんが毎日誰か居らんがか?言うとるもん。」っと答えます。
恵梨さんは、剛志の姉、2人より5つ上の先輩で、郷土芸能部が初めて国立劇場に出演した時のメンバーで歌い手、律子と一緒に観光協会で働いている先輩。
「あ、そうや。明日の夜空いとる?恵梨さんと2人で飲みに行く事になっとるんやけど、、、」っと言いながら、不敵な笑みを浮かべる律子。
「夜なら大丈夫だよ。お昼はお母さんの代わりに仕事しなきゃなんだけど。何その悪そうな顔、変な事考えなくていいから!」琴美がそう言うと、「あ、私お父さん迎えにいかんなんがやった。なら、また明日ね。迎えにくっから」っとそそくさと帰って行った。
律子
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