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「まだ大丈夫なのかな、、、」 律子が帰ると、期待と不安が入り混じる不思議な感覚を覚えた。 そっと高校の頃まで使っていた勉強机の引き出しを開け、中から小さな箱を取り出すと、あの頃を思い出します。 高校最後の夏、彼女達は青森県に居ました。 「これ爺ちゃんにお土産げにすっか!」 高速道路の小さなサービスエリアで見つけた津軽塗の箸。 「そんな高いもんいらんわいね!いくらすると思って、、」藤三朗へのお土産を選んでいる剛志に、琴美は値段を見て少し呆れました。 「でも、世話になったし、、バイト代とお小遣いで買うわ。ついでに琴美のも買ってやる。」そう言って聞かない彼、「箸やったら私はこっちの簪の方がいいわ、、」ポロっと言った一言で買ってもらった簪。 翌日の本番、琴美はそれをお守りの様に身につけ歌いました。 「ずっと眠ってたね。ごめんね。」簪を手に取ると、髪を結び久々にそれを身につけました。 「明日、、持って行こっかな。。」 ただ、今一つだけ言えるのは「私は、まだ彼の事が好き。」 毎日満員電車に揺られ行く会社も、週末お洒落して行く飲み会も、、、東京に出るまで育った、ここでの生活に比べたら薄っぺらい事のように思う。 なぜ東京で就職したか、、今思えば、彼への当て付けだったんじゃないか、、、 色々な感情が押し寄せてきます。 「琴美、寝とる?」部屋の外から母の声が聞こえてきました。 「起きてるよ」っと返事をすると、スッと襖が開きます。 「さっき、帰ってくるなり、りっちゃんから聞いたよ?ビックリしたわ。。アンタ帰ってくる気け?」 悪戯っぽく笑いながら「どこでもなにしとっても琴美は琴美やよ。アンタが今何考えとるか言わんでもわかるわ。一杯悩まれ。それで答え出され。私らは力になるから。」 その言葉に琴美は思わず、母に抱きつき涙しました。 「清流館、、私継いだらダメかな?あの舞台無くしたくないから。」 母の胸元でそう呟きました。 「そんな早く答え出していいが?」っとまた笑われました。
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