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宵宮の会場である神社の鳥居をくぐってから、俺たちは目を皿のようにして火の玉屋を探す。
「綿飴食べたーい!」
香多くんがつい他の露店に誘惑されかけるが、親父が何気に香多くんの手を引いたら香多くんは諦める。
「おじさまが手を引いてくれるならあとでいーやー」
相変わらず親父殺しだが、親父は良識あるへんたいだからあまり惑わされない。香多くんにとってはそういうところがいいんだろうな。
「あったーー!!」
げたんわくんが叫ぶ。俺はそれを聞くなり、すぐに駆けた。
「火の玉屋のおじさん、こんばんは!」
「お兄さんな!今年も来てくれたか。にょたチョコ男子の譲ちゃん」
「当たり前じゃん!来ない訳ないじゃん!」
「俺も毎年楽しみなんだよねぇ。にょたチョコ男子モデル全員に会えるのだからさぁ」
火の玉屋のおじさんは何気にミーハーだ。
「さて、行くか!!」
火の玉屋のおじさんは、みんなにろうそくを配り、早速火を灯す。最初は伊織先生だ。
火の灯されたろうそくに手足が生えて、ろうそくに顔が浮かぶ。毎年見てるけど、いつ見ても不思議だ。
「子孫よ……。お前はこの一年、何人女の子を泣かせたのだ?」
「えーと沢山?」
「馬鹿者!!この一年にニ百三十四人だ!いつか捕まるぞ!?」
「私、恋多き女だからー」
いきなり聞きたくない話を聞かされた。一年でニ百三十四人とどうやって関係持てるの?
続いて薫蘭風ちゃん。薫蘭風ちゃんのご先祖は毎年何を話しているか俺にはさっぱり理解できない。
「いいやおい本、見つけたのよ!絶対あなたに勧めたくて待っていたのよ!」
「今はBLっていうのが普通だよ?で、どれ?スマホで検索するね!」
やっぱり何を言っているのか分からないが楽しそうだからいいか。
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