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すごく良かった。感動した。名演技だったと、観てくれた人は言ってくれる。
最後のシーン、俺は演技なんかしていない。全て本心だ。
彼女が俺に向けてくれた言葉も態度も優しさも、全てこの映画のためだったのかと思えるほどに、映画の出来は良かった。
「なんだ? また観てたのか?」
加藤先輩が呆れたように言う。
3日間の学園祭で合計6回行う上映、その全てを俺は観るつもりでいる。
「まあ初主演の映画だからな。気持ち、分からなくもねえな」
そう言いながら、俺の肩を叩く。そろそろ帰るお客さんを見送る準備をしないといけない。
ちょうど、彼女が消えたシーンが終わった後だから、この後は関係ない。俺が観たいのは、彼女だけ。
スクリーンの中の彼女は、いろんな表情を見せていた。屈託のない笑顔、驚いた顔、照れた顔、そして、悲しそうな笑顔。
いつかまた、彼女を必要とした時、彼女は俺にレンタルされてくれるだろうか? 俺がずっと映画製作に関わっていたら、再び彼女に会えるだろうか?
「まずは体力つけなきゃな」
「何か言ったか?」
「いえ、何も……」
彼女は自分を人形だと言ったけれど、やっぱり人形とは思えない。諦めの悪い俺は、きっといつまでも、彼女を追い求めるのだろう。
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