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判明
あの日見掛けた美少年の事も忘れかけてたある日。
再び出会う瞬間は突然訪れる。
友達の山崎風香と遊んで、一緒にマンションに帰って来た時だった。マンションから出て来る1人の男性。5、6m先からその銀髪が目に入る。ちょうどサングラスを取り出し掛けたから、横を通り過ぎるその時には顔が見えなかった。甘いムスクの香水の匂い。彼がエントランスの先に着く頃に傍に乗り付けた黒のワンボックス、その後部座席が開いてそのまんま乗り込んで行ってしまった。
流れるような一連のシーンに見惚れていた。
その私の視線に気付いていた風香も、一緒に見ていたらしい。
ズズズッとスタバのピーチフラペチーノを飲み干す音が聴こえて隣を見る。
「あーいうの好きなんだ?」
風香が興味無さそうに呟く。
「好き……ってか、カッコ良くない!?」
ドキドキが止まらなかった。まさか、また会えるとは……。
「いや別に……あぁいうの、見慣れてるからかな。それに別の顔知っちゃってるしね。酷いもんよ?おかげでイケメン嫌いになった感」
そう言うと、もう一度ズズズッとフラペチーノを吸い上げた。
「え、待って待って待って待って……あの人知ってんの!?」
慌てる私が振り向いた時には、既に風香はマンションに入ろうとしていた。
「なんか見た事ある気がすっけど、思い出せない。」
そうだった。忘れてたけど風香の仕事は夜専門の美容師。出勤前のホストやキャバ嬢なんかがセットしに訪れる店だ。
風香とは、梶くんの店で出会った。その日は混んでいて、いつもより賑やかだった。帰ろうかと躊躇った時、梶くんが『ここ座んなさい』と指し示したのが、風香の隣。『今日は忙しくて相手出来ないから、アンタ達で話してて』と雑な紹介だったけど、梶くんの目論見通り私達はすぐに意気投合して親友になった。私より2つ年下のはずなのに、妙に大人びてるのは仕事のせい?
その風香こそが、あの美少年の情報を知る為に一番近い人物だったのに!
「あのね、あの人ここで見たの2回目なの!」
美少年の話を出来る事に思わず興奮してしまう。
「住んでんじゃないの?」
確かに此処は、夜の仕事関係の住人も多い。
「ううん!違うと思う……こないだはそこの植え込みのとこでしゃがんでたもん。誰か待ってたのかな」
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