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「優月がどうこう出来る相手でないから、やめときな」
冷めたからあげクンを口に放り込みながら、風香が言う。
「別にどうこうしたいワケじゃ無いけど……」
サトハルに惚れて、玉砕して、久しぶりの胸キュンだったから。
「梶ぃでいいじゃん。梶ぃにしときなよ」
風香は梶くんの事を語尾を伸ばしてこう呼ぶ。
「やだよ、なんで梶くん……」
梶くんだって私だって、そんな目で見た事ない。女同士みたいな感じだ。
「ほんっと優月って鈍感!梶ぃは絶対、気ぃあるから」
「んなワケないじゃん!いっつも怒られて、梶くんなんてお姉ちゃんみたいなもんだよ」
「相手にされないだけならまだしも、性別超えちゃう梶ぃってほんと不憫」
そう言うと、最後のからあげクンまで口に放り込んだ。
「梶くんだよ?男感じないじゃん……そういう時代かも知れないけど、私はもっとちゃんと男らしい人のがいいよ」
風香は、そういう私の顔を黙って見ていた。
「……え?」
気持ち悪いなぁ、なんか言ってよ。
「そっか、優月は知らないんだっけ」
「……何が?」
「梶ぃとは同級生だって言ってたもんね……中学だっけ?梶ぃとの、空白の期間ってどんくらい?」
梶くんとの空白の期間……か。辿ってみる。
「再会したのが6年前の23歳。高校から離れたから、8年位かな。」
「……私さぁ、17の時から梶ぃ知ってんのね?19の梶ぃは気のいい奴だけどどっかちょっと頼りなくて、でも皆んなに可愛がられてて。何て言うか……みんなのマスコット的な。それがさ、悪い女に捕まっちゃってさ。それからかなぁ、変わってった。女の好みに無理矢理変えられちゃってさ、仲間とも距離置くようになっちゃって。あの頃の梶ぃ、かなり尖ってたなぁ」
『頭なんて、こんなハリネズミみたいな!』と体全体を使って表す風香の言い方がおかしくて笑う。
「久しぶりに連絡がきて、そしたら店を出したって言うっしょ。行ったっけさ……あの梶ぃに仕上がってた。聞くに聞けなかったけどさ、なんかあったんだと思うんだよね。最初の頃なんて、時々素が出ちゃってたよ」
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