夜蝶

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 「何これ、ススキノの情報誌なの?」    「前はもっとあったんだけどねー、今じゃフリーペーパー併せて3冊位かな。ホスト専門は、それだけ。」  ふーん、そうなんだ。如何にもなカッコつけた写真が並んでいた。  「……ってちょっと!」  パラパラめくって閉じた私を、一喝する。  「ほら!」  私から雑誌を奪い取ると、凄いスピードでページをめくっては戻りして、私の膝の上へと戻した。  「……アーーー!!!」  開かれたページに視線を戻した瞬間、釘付けになった。  それはまさしく、あの美少年だ。  スーツ姿と、ラフな私服姿、見開きを使って掲載された数々の写真。それは『いま勢いのあるホスト』と言う特集ページの5人の中の一人だった。  ヤバイヤバイヤバイ……えっと、名前とお店は……っと  「何すんのよ!」  いきなり取り上げられた私は当然、反発する。  「優月アンタ……行ったりしないわよね」  鬼のような形相で私を睨みつけて居るのは風香。そして見せたのも、風香だ。  「……い、行かないわよ」  だから返してよ、と奪い返そうとしてもなかなか雑誌をその手から離してくれない。  「目を覚まして欲しいから、現実知って欲しいから、見せてんだからね?」  そう言いながら頭上高く雑誌を持ち上げる。  「わーかってるよ……だから見ーせーてぇ!!」  立ち上がってほぼ強引に取り返してやった。    「……まったく」  そう呆れる風香を横目に、勢いよくソファーに座り込む。  【蓮-Ren age21 175㎝ A型 Real所属 No.4 1000万プレイヤー】  これが、あの美少年のプロフィールか……え、1000万プレイヤーって……絶句していると、隣から風香が覗き込んだ。  「あぁ……えげつないしょ?結構その雑誌さ、客向きよりも同業者向けなんだよね。求人の役割果たしてて。こういうさ、美容室や撮影スタジオに置かれたりしてんの」
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