夜蝶

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 夜の仕事をしているとは思えない、綺麗な肌。それが紙面の修正によるものではない事を私は知っている。まだあどけなさが残る顔も、憂いを帯びた表情も、見たまんまだ。……いや、実物のがずっとずっといい。  「……声、どんなかなぁ」  「アンタいい加減にしなってば!」  風香のドスの効いた声を受けた事で、自分が今声に出してしまっていたのだと知る。  「……出ちゃって、た……よね?」  雑誌を盾に風香の攻撃を避けようとした。  「……梶ぃが心配すんのも無理ないわ」  何でまたそこで梶くんが出てくるのか。  「風香さ……」  「行かない!」  「まだ何にも言ってないじゃん」  「言わなくたってわかる!」  風香は私の手から雑誌を取り上げるとそのままテーブルに放り投げた。  「風香これ……」  「あげない!」  「だからまだ何にも言ってないじゃん」  「だから言わなくたって分かるって!今日もう店終わりだから行くよ」    「行くって何処に」  風香が店じまいをしている様子を見ながら、そーっと……雑誌をバッグに忍ばせた。  「梶ぃの店行こ。お腹減った」  風香は気付いていない、様子。  「雑誌!ちゃんと戻しといて」  げ。バレてた。  「ふーちゃーん……」  とびっきりの猫なで声を出してみるも  「何その気持ち悪い呼び方」  本気で嫌がられて逆効果。  しょうがない、こうなったら奥の手を使うか……。
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