4人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の仕事をしているとは思えない、綺麗な肌。それが紙面の修正によるものではない事を私は知っている。まだあどけなさが残る顔も、憂いを帯びた表情も、見たまんまだ。……いや、実物のがずっとずっといい。
「……声、どんなかなぁ」
「アンタいい加減にしなってば!」
風香のドスの効いた声を受けた事で、自分が今声に出してしまっていたのだと知る。
「……出ちゃって、た……よね?」
雑誌を盾に風香の攻撃を避けようとした。
「……梶ぃが心配すんのも無理ないわ」
何でまたそこで梶くんが出てくるのか。
「風香さ……」
「行かない!」
「まだ何にも言ってないじゃん」
「言わなくたってわかる!」
風香は私の手から雑誌を取り上げるとそのままテーブルに放り投げた。
「風香これ……」
「あげない!」
「だからまだ何にも言ってないじゃん」
「だから言わなくたって分かるって!今日もう店終わりだから行くよ」
「行くって何処に」
風香が店じまいをしている様子を見ながら、そーっと……雑誌をバッグに忍ばせた。
「梶ぃの店行こ。お腹減った」
風香は気付いていない、様子。
「雑誌!ちゃんと戻しといて」
げ。バレてた。
「ふーちゃーん……」
とびっきりの猫なで声を出してみるも
「何その気持ち悪い呼び方」
本気で嫌がられて逆効果。
しょうがない、こうなったら奥の手を使うか……。
最初のコメントを投稿しよう!