夜蝶

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 「もう信っじらんない!」  横でプリプリしながら梶くんから2杯目の白ワインを受け取る風香。  「私からしたら、援護したアンタも信じらんないっ」  梶くんが両手をクロスさせて自分の体を抱きながら身震いさせた。  「違っ!私は諦めさせようとしたんだって」  腑に落ちないらしい。  「この子にはね、そんな生ぬるい制御は効かないのよっ」  ふたりの会話に興味はない。蓮くんを飲むお酒は格別だった。  ー奥の手。  私は強引に風香の手に500円玉を握らせ、雑誌を奪取(だっしゅ)した。  「やっと樹海から出て来たと思ったら……また新しい樹海に入り込んじゃったのね」  「梶ぃがしっかり手綱握っとけばいいのにさ」  「何よ!」  「梶ぃのそのキャラ戻そうよ……優月には梶ぃしか居ないって」  「キャラって何よ!こんなチンチクリン、私は御免よ!!」  「ハイハイハイハイ……揉めない揉めない」  騒がしい二人を制する。  『アンタのせいでしょうが!』  珍しく二人の意気投合。空気砲を浴びた。  「どれ、そんなにイイ男なの?ちょっと見せてみなさいよ」  そういうと私の手から雑誌を奪い取る。『汚さないでよ!』と声を掛けた。  「イイ男でしょ?」    「今どきの感じだよね。モテんのは分かるわ」  風香も素直に同意。  ……あれ?梶くんが何も言わない。  「……知ってる人?」  恐る恐る問いかける。  「ううん、知らない」  そう言うと、パタンと雑誌を閉じて私に返した。  「梶ぃ……」  それを見て、風香も怪訝な顔をした。
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