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一人になった部屋で、自己嫌悪の黒い渦に飲み込まれそうになる。
(あぁ……ダメだ。)
月に一度訪れる、何をやっても何を考えても駄目な日。レディースデイが近いといつもこうだ。全部それのせいにする訳じゃないけど、自分で自分が手に負えない。
イライラ、モヤモヤ、上手くいかない。
「……ごめん」
裏口のドアの前で、サトハルを待っていた。
「……いいよ、別に。アレの日だろ?」
私の姿にちょっとビックリした後で、頭に手を置いてそう言った。
「……そういう風に言われると、ムカつく」
頭に置いた手をそのまま肩に落として私の首に回すから……抱き締められたみたいになってドキドキする私の口を、器用に尖らせた。
「俺なりに、お前のこと心配してんだけどな……フラフラしないように、悪い男に捕まんないように、傍に置いときたいんだよ」
おまけに急にそんな優しいこと言うから、気持ちが溢れる。
「なら私を嫁にしてくれたらよかったじゃん」
言っといて、反応が怖くなる。
「……言うのが遅いんだよ」
そう言ってアハハと笑うと、厨房に戻って行った。
(いっつもそうやってはぐらかす……狡いよ)
結局私は、一度もサトハルに好きだと言えなかったし、言わせてもらえなかった。きっと、だから余計に心ん中に残ったままなんだよね。
ちゃんと、失恋しとけばよかった。……今更だけど。
次は、ちゃんと言うんだ。それだけは、決めてる。
でもその相手が蓮なら、また不毛な恋のまま終わっちゃう。
今ならまだ、大丈夫。芸能人?みたいなもんだから。
このまま会わずに居れば……好きにはならないで済むけど。
もしももう一度会っちゃったら、私はきっと運命の恋だと思ってしまうだろう。……こんな事考えちゃってる時点で、もう落ちちゃってるのかも知れないな。
あ、梶くんに言わせたら……樹海に迷い込んだってやつ。
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