プロローグ

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 コンビニで買い物を済ませた私は、アプローチを望む敷地の入り口まで歩いて来て肩を落とした。  ー彼の姿はもう見当たらなかったから。  『まだいるかな』とする自分と、『まだいたらどうしよう』と何がどうしようなのかしている自分とがせめぎ合って、半透明の袋からは目的だったはずの缶チューハイや珍味の類ではなく、ミルクティーのペットボトルやポッキーが顔を覗かせた。  思わずそれらを地面に叩きつけたくなる衝動を抑えて、やや早歩きで自宅へと急いだ。  一体私は、何を考えているんだ……。  それが松浦優月(まつうらゆづき)29歳、崖っぷちと言われる年齢の女性の休日の昼下がりだった。
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