岐路

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 「さて、今日は君の未来の話をしよう」  は、統括マネージャーの顔になった。  「新店の話はもう聞いたね?」  そう口にするマネージャーの顔から、笑顔が消える。  「あ、はい。」  佐藤さんから、と言い掛けて飲み込んだ。  「……悪くは思わないで欲しいんだけど」  そこまで言うと、私の反応を待ってるみたいだった。  「その構想に、君は入っていないんだ」  「……え」  「佐藤くんに、新しい店の顔として店長を打診したのは本当だよ。ただ、他のメンバーももう決まっているんだ。何故か佐藤くんと店長の間で取引があったようだけどね、それは認める訳には……いかないんだな」  それは、優しくもハッキリとした口調だった。  (……そっか、私じゃなかったんだ)  会社から認められた訳じゃ無い、と解ると途端に惨めな気持ちになった。  何を悩んでいたのだろう。  そんな私の目の前に、松原さんはティッシュを箱ごと差し出した。  (……え?)  「なんか泣きそうな顔してるから」  「あ、すみません……大丈夫です」  私は頑張って、笑顔を作る。『そうか』とをテーブルに置きながら話を続けた。  「誤解しないでね、僕は、君をんだよ」  お店で見てきた優しい笑顔。  「君のその飾らなさとか、どんな客も壁をつくらずに受け入れるところとか、混雑時の捌き方とか、それに何よりその笑顔。それは、今の店に必要なんだと思っているよ。」  そう言うと、新店はその土地柄から客層が違う事や時間帯、店のコンセプト等もガラッと変えることを丁寧に教えてくれた。  「店長もそれは解ってるだろうし、君への評価は同じだったんだけどね……彼に負けちゃったかな」  そして彼はいたずらっ子のような表情でウィンクを一つ。  
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