変身

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 風香が両肩を叩いて『出来たよ』と言った。  恐る恐る、閉じていた目を開く。  (……う…うわぁ……)  「……何これぇ…」    「不満?」  不安な声を出す風香。  「違っ!凄いよこれ!!」  よく見たキャバ嬢のヘアスタイルがそこにあった。  ほら、全体的にウェーブがかって、頭の上が盛り盛り!  「鳥の巣みたい!」  触ってみたら、スプレーでガチガチ。  「言い方!逆毛、けっこー似合うね」  苦笑しながら、『こっち向いて』とメイクも夜用に。  「嬉しぃー!風香ありがと」  女の子は、髪型やメイクが決まると気持ちもアガるってほんとだ。  「優月、変にハマりそうだからさ……敬遠してたわ」  そう言いながら、メイクも完成。  「いやーん!やばーい……」  両頬を手のひらで支え、覗いた鏡の中にはお姫様。  「メイク映えるね。……いいんじゃない?」  「梶ぃに見せに行こ!」  「体験入店したーい!」  二人が同時に発した言葉。  「だから嫌だったんだよ!何考えてんの!?」  呆れる風香が、更に追い討ちをかけた。  「歳食いすぎだから!!」        *  金曜の夜だってことを忘れてた。結構な混雑ぶりで、道路にはホストらしき男達が間隔を空けて立ったり座ったり。その前を仕事帰りのサラリーマンやOLさん達が往き交い、狙った獲物目掛けて声を掛けて行く。  いつもなら素通りされる私にすら、『おねーさん、これから仕事?』『今の店に不満ない?うち稼げるよ』等と…え?と思うような声も多いけれど、呼び込みの声がひっきりなしに掛かった。
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