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さっきまで体験入店なんて強気でいた私も、生まれたてのヒヨコのようにすっかり怯えていた。
風香に変身させてもらった事で自信がついたかと思いきや、やっぱり中身はそう簡単には変わらないって事。
ドライでクールな風香は男達には目もくれず、颯爽と歩いている。
もともと美人な風香はとても目立つ。
それに加えて、お店のお客さんなんだろうな……時々『あ、姉さんお疲れっす』とか『風香お疲れぇ』なんて声も掛かってカッコイイ。
見惚れていると、風香の姿があっという間に先の方へ。
慌てて追いかける。
……と、4〜5人の男性グループが突然隣のビルから出て来てぶつかりそうになって咄嗟に体をかわした。
(あっぶな……)
ホッとしたのも束の間、前方から歩いて来た男性とぶつかりそうになった。
「あっ……」
ぶつかる!
「……あっ!」
こ、この人……!
『あっ!』
その人との距離、数十㎝
「あ!」
やっとの事で体勢を整えたものの、盛った頭が前へと倒れそうになる。
『ああ!!』
重力にさえ逆らって、盛り盛りの頭もどうにか元へ。
『……あ』
ジャンプスキーの選手が着地した時のような体勢。
パチパチと周りから拍手が起こる。
「ご、ごめんなさい!」
目の前の男性に謝る。……って、爆笑?
スーツ姿のキマってる、美少年……蓮が私の目の前で爆笑していた。
「い……いや、ちょっと…」
わ、笑い過ぎじゃない?
『あ、ごめ……君の頭にさ、これ刺さっちゃって……』
と、盛り盛りヘアーからタバコを取り出した。まさに鳥の巣。
『ありがと。気をつけて帰るんだよ』
赤面する私の頬を両手で包んで、歩いて行った。
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