変身

4/4
前へ
/34ページ
次へ
 ……い……いま……いまのって……  「……蓮だよね」  彼の後ろ姿を目で追ったまま立ち尽くす私の背後から風香の声。  「蓮だよね!?」  振り向き様、彼女の両肩を掴んだ。  (やっと会えた……)          *  「……でね、すっごいイイ香りがしたの!」  私の目は梶くんを捕らえている。なのに何の反応も無い。  「ちょっと!聞いてるの?」  そこまで言ってやっと、『うっるさいわねー、聞こえてるわよ』と面倒臭そうに返事。ほらね、絶対に変だってば。だって目が合わないもの。  頬杖ついて私たちのやりとりを見ていた風香も、  「梶ぃさ、どした?」  梶くんの様子を伺っている。  「明日も仕事でしょ?早く帰んなさいよ」  風香の質問に答えず、そう吐き捨てた。  私のヘアメイクにだって、何にも言ってくれてない。  気づいてないワケがないのに。  「……最近の梶くん、感じ悪いよ」  思わず私も、突っかかってしまう。  「あら、そ?ごめんなさいね」  まだ、目は合わないまんまだ。  「……梶くん、見てよ……こっち見てってば!」  ついに、言葉すら出てこなくなった。  「ごめん、風香。私、先に帰るね」  私の手を掴んで、引き留めようとする。  「今日は綺麗にしてくれてありがと。梶くん、ご馳走さま」  カウンターにお金を置いて、逃げるようにして店を出た。  ……私、浮かれ過ぎてた?そうかも知れないけど。なんか、梶くんにはいつも傍で見ていて欲しい。今までだってそうだったじゃん。そして好き勝手言ってたじゃん。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加