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……い……いま……いまのって……
「……蓮だよね」
彼の後ろ姿を目で追ったまま立ち尽くす私の背後から風香の声。
「蓮だよね!?」
振り向き様、彼女の両肩を掴んだ。
(やっと会えた……)
*
「……でね、すっごいイイ香りがしたの!」
私の目は梶くんを捕らえている。なのに何の反応も無い。
「ちょっと!聞いてるの?」
そこまで言ってやっと、『うっるさいわねー、聞こえてるわよ』と面倒臭そうに返事。ほらね、絶対に変だってば。だって目が合わないもの。
頬杖ついて私たちのやりとりを見ていた風香も、
「梶ぃさ、どした?」
梶くんの様子を伺っている。
「明日も仕事でしょ?早く帰んなさいよ」
風香の質問に答えず、そう吐き捨てた。
私のヘアメイクにだって、何にも言ってくれてない。
気づいてないワケがないのに。
「……最近の梶くん、感じ悪いよ」
思わず私も、突っかかってしまう。
「あら、そ?ごめんなさいね」
まだ、目は合わないまんまだ。
「……梶くん、見てよ……こっち見てってば!」
ついに、言葉すら出てこなくなった。
「ごめん、風香。私、先に帰るね」
私の手を掴んで、引き留めようとする。
「今日は綺麗にしてくれてありがと。梶くん、ご馳走さま」
カウンターにお金を置いて、逃げるようにして店を出た。
……私、浮かれ過ぎてた?そうかも知れないけど。なんか、梶くんにはいつも傍で見ていて欲しい。今までだってそうだったじゃん。そして好き勝手言ってたじゃん。
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