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#梶 圭介
優月が出て行った。
乱暴に閉められたドアの音が、重く響く。
「梶ぃ……」
心配そうに俺を見ている風香が目に入る。
やっべ。胸がざわつく。
「……風香、ごめん。ちょっと素に戻ってもいい?」
「梶ぃはちょっと無理し過ぎ」
風香なら、大丈夫な気がした。どんな、俺でも。
「俺ひとりじゃ、もうアイツ止められそうにないんだ……」
「……優月?」
「……そ。相手がどんな奴だって、見守ってく自信あったけどさ」
「蓮じゃ、不足?」
「……アイツだけは、絶対ダメ」
「……梶ぃさ、蓮のこと……知ってるんでしょ」
さすが風香は勘がいい。よく見てんな。
「……風香さ、俺が付き合ってた女……覚えてる?」
もう9年近くも前か……覚えてないよな。
「バタフライでしょ?」
即答する風香の記憶力に驚いた。思わず笑ってしまう。
「お前、すげーな」
「だって、あの頃の梶ぃの変貌……衝撃だった」
確かに、俺どーにかしてた。
風香の言うバタフライそれは、彼女の胸元に入ってたタトゥー。
2つ歳上のキャバ嬢と付き合ってた。……っていうかペットみたいなもんで
彼女には本当の彼氏が居たんだ。
その彼氏ってのも、悪い奴でさ……その彼女も、他に女は何人も居たうちの一人に過ぎなかったんだけど。
「……あのさ、これから風香に話す事は……優月には言わないで」
「その前に確認。梶ぃ、優月の事さ……好きなんだよね?」
守りたいからなんだよね?と、彼女は俺に念を押した。
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