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運命
『もう一度出会えたら、運命の恋だと思ってしまうだろう』
そう思っていた恋は、始まってしまった。
その想いの強さが引き寄せてしまったのか、その後もすぐに彼と出会えたんだ。
*
その日も仕事は休みだった。彼との遭遇から僅か4日後。
外出から帰って来た午後15時頃。マンションから出て来る彼と出会った。
「……あ」
思わず声に出ちゃって、ヤバイと思ったけど遅かった。そのまま俯いて通り過ぎようとしたところで
「……あぁ!鳥の巣ちゃん」
彼が私を指差した。……私のこと覚えてた!?ってか、鳥の巣って!
「今日は随分と、雰囲気違うね」
そう言うと、私の頭にポンと手を置いた。
「顔、赤っ!ごめんごめん、急に話し掛けちゃったからね」
じゃあね、と手を振って歩いてく蓮の後ろ姿に
「あ、あのっ!ここ……ここに住んでるの?」
慌てて叫んだから、声が裏返った。
彼は立ち止まって、眩しそうに右手をかざしながらマンションを見上げると『違うよ』と答えた。
「わ……私、優月……松浦優月!ここに住んでる」
突然自己紹介を始めた私を黙って見つめる。言ってから後悔。
(何言ってんだ、私……)
「ご、ごめんなさい!」
一礼をして、マンションに向かう。
「蓮!俺は、蓮。……またね、優月」
振り向くと、蓮が笑顔でそこに立っていた。
そして前に見た黒のワンボックスがやって来て、乗って行った。
私はそれを、見えなくなるまで見送っていた。心臓が、ドキドキしていた。
前に梶くんに言われた事も、すっかり忘れて。
まだ、彼がどんな人なのか私は知らない。
だけど、今のこの気持ちだけで充分なんじゃないかって思うんだ。
恋に落ちるのに、そんなに理由なんか要らない。
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