魔法

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魔法

 サトハルと由紀乃を見送ってから二週間。  プレオープンの日はやって来た。  サトハルからは切羽詰まったお誘いLINEが届いてたけど、意地で行かなかった。メニュー開発は大通りの店よりもススキノの店の方が大変らしく、苦戦していたらしい。  二人がいなくなった大通り店は寂しい。  でも、変わりなく日常は続いている。  サトハルにとっても、きっとそうなんだろうと思う。  そういう距離に、私たちは居たんだ。  ー店長と二人、奥のボックス席に通される。  落とし過ぎない、程よいムーディーライト。  グリーンも多く、ちょっとしたリゾートを思わせる明るい造りの大通り店とは違って、ここは何ていうか……ホテルライク?  路地裏のような細い通路を抜けて目に飛び込むのは、バーカウンター。  ライトアップされた棚の手の届かない上の方にまで、様々なアルコールのボトルが並んでいて、舞台俳優のようにそれぞれが光輝いているように見えた。  フロアに配置されたテーブル席やソファー席は、座った時に人目が気にならないような造りになっている。  きっと、来る度に違う席に座りたくなるはず。  隠れ家のような、日本じゃないみたいな……。  今日見て、納得した。  このフロアを回すのは、私じゃない。あの日マネージャーに言われた事が腑に落ちた。適材適所ってやつ。  メニューは、和洋折衷様々な創作料理が並んでいた。  15時〜1時までのダイニングバー営業。お酒に合うようなメニューから、スウィーツも充実している。  そうそう、札幌らしくシメパフェもね。  ちょっと大人っぽい制服に身を包んだ由紀乃が、私達のテーブルにやって来た。たった二週間会ってなかっただけなのに、随分と大人びて見える。  
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