4人が本棚に入れています
本棚に追加
魔法
サトハルと由紀乃を見送ってから二週間。
プレオープンの日はやって来た。
サトハルからは切羽詰まったお誘いLINEが届いてたけど、意地で行かなかった。メニュー開発は大通りの店よりもススキノの店の方が大変らしく、苦戦していたらしい。
二人がいなくなった大通り店は寂しい。
でも、変わりなく日常は続いている。
サトハルにとっても、きっとそうなんだろうと思う。
そういう距離に、私たちは居たんだ。
ー店長と二人、奥のボックス席に通される。
落とし過ぎない、程よいムーディーライト。
グリーンも多く、ちょっとしたリゾートを思わせる明るい造りの大通り店とは違って、ここは何ていうか……ホテルライク?
路地裏のような細い通路を抜けて目に飛び込むのは、バーカウンター。
ライトアップされた棚の手の届かない上の方にまで、様々なアルコールのボトルが並んでいて、舞台俳優のようにそれぞれが光輝いているように見えた。
フロアに配置されたテーブル席やソファー席は、座った時に人目が気にならないような造りになっている。
きっと、来る度に違う席に座りたくなるはず。
隠れ家のような、日本じゃないみたいな……。
今日見て、納得した。
このフロアを回すのは、私じゃない。あの日マネージャーに言われた事が腑に落ちた。適材適所ってやつ。
メニューは、和洋折衷様々な創作料理が並んでいた。
15時〜1時までのダイニングバー営業。お酒に合うようなメニューから、スウィーツも充実している。
そうそう、札幌らしくシメパフェもね。
ちょっと大人っぽい制服に身を包んだ由紀乃が、私達のテーブルにやって来た。たった二週間会ってなかっただけなのに、随分と大人びて見える。
最初のコメントを投稿しよう!