4人が本棚に入れています
本棚に追加
店長に全部食べられないうちにと、慌てて口に運んだ。
「……ほんとだ、美味しい」
素直に口にして、『どういうつもり』とサトハルを睨む。
「そういうつもり」
と、意味の解らない言葉で私の頭をポンポンと撫でた。
踏ん切りついたはずの気持ちが、たったそれだけでグラグラと揺らぐ。
悪い男と悪い女が仕切るこの店、前途多難……。
「バーカ!」
サトハルのお腹めがけてグーパンチ。
「仕事終わり、たまにはこっちにも顔出せよな」
……人の気も知らないで。
でも、素敵な店だと素直に思う。
談笑してると、マネージャーを見つけた。
マネージャーも私を見つけて、いつものウィンクをひとつ。
彼が魔法使いのように思えて、微笑み返した。『頑張ります!』と、小さなガッツポーズ付きで。
*
セレモニーは滞りなく終了し、店長はマネージャーと一緒に、更に深い夜の街へ。
(今夜は……帰ろっと)
珍しく、早い帰宅。
あんな素敵なの見せられちゃうと、頭の中はお仕事モード。
考え事しながら歩いてたから、名前を呼ばれてるのなんて気付かなかった。
後ろから急に肩を掴まれて、ハッとなる。
振り向くと、そこにはまさかの……蓮がいた。
「全然、気づいてくんないんだもんなー。追っかけちゃったよ」
え……嘘……。
スーツでキメた、蓮の姿がそこに。
最初のコメントを投稿しよう!