魔法

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 「蓮……」  憧れの彼が普通に目の前で笑ってるのが信じられなくて。  「そんな驚いた?」  屈託のない笑顔。……こんな顔するんだ。  「驚いた!仕事……ですか?」    「そう、これからお仕事。優月は今帰り?」  蓮が私の名前を覚えてくれてる!  「うん……私の名前覚えてるの?」  「あぁー俺ね、名前と顔覚えるの得意」  仕事柄?と思ったけど訊くのはやめた。  「……優月、お酒好き?」  スーツの内ポケットから何か取り出そうとしながら訊ねた。  「好き……大好き!」  あなたが、と言いそうになる。私の強めの返答に笑う蓮。  「ってか、優月って何歳さ」  「え……っと…29歳」  思わず小さくなる声。『えっ、マジで?』と蓮。  「俺よりちょっと上なだけかな?って思った。あ、俺21ね」  知ってるよ、と思いながら驚いたフリをする。  「優月、若いね!可愛いし」  ホストめ!と思いながら、飛び上がりたい程嬉しかった。  「ホストクラブ、行った事ある?」  ブンブンと首を横に振る。……振り過ぎてちょっと頭がクラクラした。  それを見て、また蓮が笑う。『素直な子だね』って。  「フリーチケットあるからさ、一度友達とおいで。指名は出来ないけど、120分体験できるよ。」  そう言うと、チケットというよりは名刺サイズのカードを私の手に。  漆黒のカードには、金色でInvitationの文字。裏にはRenと名前だけ。  ドキドキして、手が震えた。  その様子を見て、優しく笑いながら私の頭に手を置いた。  「絶対、ハマっちゃダメだよ。体験するだけだからね」  
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