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転機
銀髪の美少年には、あれから出会っていない。
あの髪色だけで、きっと遠くからだって分かるはずだった。
一日に一回は、考えていた。それ位、気にしてる。……でも、会いたいのかって訊かれたら……わかんない。
多分だけど、あんな髪色って事は普通のサラリーマンとかじゃなくって。飲食店だって無理だ。ってことは、アパレルか美容師か……学生?いや、学生って感じでもなかった。フワフワしてる感じはしなかった。もっとこう……自分の力で生きてる感じがした。
そう考えると……1番可能性として高いのは、ホスト。
(あ〜……やっぱ、そっちかなぁ)
「……イッ痛ぁー!!!」
突然の後頭部への衝撃に思わず叫ぶ。
「……るっせ!」
サトハルの仕業だった。
「何よ!」
この暴力男、と睨みつける。
「お前さっきから顔が煩いんだよ」
そう言って、親指とその他4本の指で私の両頬を挟む。
「……ハニホレ」
何それ、と言ったつもりが両頬を挟まれたせいでそんな発音になった。
「お前さ、夜空いてる?」
サトハルが離した頬を両手でマッサージしていると、真剣な面持ちで切り出した。
「……空いてる」
久しぶりの誘いに、緊張が走る。
「んじゃ帰り待ってて、飯行こう」
高鳴る心臓。
「お……奢りっ!?」
声が裏返った。
「……しょうがねぇな、焼き鳥だぞ」
しょうがないと言いながら、一度も私に払わせた事なんか無いくせに。
厨房に入ってくサトハルを目で追いながら、『期待するな』と自分に言い聞かせる。だけど学習能力と言うものが欠乏してるらしい私の頭では、駄目な期待ばかりが膨らんでいく。そんな自分に何度も……失望した。
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