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闇の濃い夜であった。闇にポツンと、灯りが点った。灯りは、長い距離をそろそろと移動し、ある地点で止まった。そして、人間の顔を浮かびあがらせた。
「タクミくん、ほんまに入るの…?」
「ケントのアホ。当たり前や、今さら引き返せるか」
少年たちはいま、小高い丘陵のふもとに立っている。丘陵のふもとには看板があり、〈立ち入り禁止〉と書かれている。が、少年たちは看板を素通りし、中に入っていった。
今は10月の始め。夜でも、まだ半袖で外を歩けるほどの暖かさだ。しかし、丘陵の中は湿っぽく、ひんやりとしている。ここが、お墓だから寒けがするのかもしれないと、少年たちは思った。
ここは、古墳だ。3年前、少年たちの住む、奈良県のこの小さな町・斑鳩町の中心部で、農家の人が柿畑を掘っていたところ、クワが、硬いものに当たった。掘り進めると、大きな石があった。奈良県は古墳が多いため、もしやと思い斑鳩町役場に調査してもらったところ、果たして、古墳であった。
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