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と、前方に、太いロープが張ってあるのが見えた。その奥に、横3.5m、高さ1.5m、奥行き1.5mほどの、赤茶けた石のかたまりが鎮座している。
……石棺だ!
古びた、いびつな長方形の、大きな石。蓋と、棺の部分とに分かれており、蓋の上には、2つの小さな石がちょこんと乗っている。2人は、ロープをくぐって、石棺に近づいた。
この中に、1400年前に生きていた人と、財宝が眠っているのだ。タクミの指が、石棺の蓋に触れた。
その時だ。ゴウッと、2人のまわりに風が巻き起こった。風は2人を包み、目を開けていられないほど、どんどん強くなっていった。何なんだこれは! 2人は、風に飛ばされないように、しっかりと抱き合った。
――2人とも、しばらくの間、気を失っていたようだ。タクミが気がついた時、風は止んでいた。さっきまで真っ暗だったのに、古墳の中は、電灯を点けたように明るくなっている。
「ケント、大丈夫か?」
傍で倒れているケントの肩をさすっていると、見たことのない形の靴が目の前にあるのに気づいた。
――え? 何この靴――?
見上げると、知らない男が立っていた。
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