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「わしの姉の息子が聖徳太子だ。つまり、わしと彼は、叔父と、甥の関係、というわけだ」
「へえぇ~、おじさんは、聖徳太子の親戚ってことなんですね!」
なんだか、崇峻天皇って、先生みたいだなあ。すごく勉強した気分だ。
「あのう、おじさん。幽霊になったら、もしかして未来のことが分かっちゃったりするんですか? 阪神タイガースは、来年は優勝しますか?」
「そんなことは知らぬ」
「ケントのアホ!」
「おっと、こうしちゃおれん、もう時間が無い。よいか、石棺を決して開けぬよう、発掘責任者に、必ず伝えるのだ」
「いえ、ですから、それは無理ですって…」
突然、天皇の目が吊り上がり、口が、クワっと横に割けた。遠足で見た、東大寺の門に立っている仁王像とそっくりな、おそろしい顔だ。背後には、巨大な炎が燃え盛っている。ゴウッと、さっきの風が吹いた。風に巻かれながら、2人は天皇の声を聞いた。
石棺を開けし者
かならずや死の音を聴くであろう
わが眠りを妨げるとき
そは
この国の亡びるときであろう
それは、さっきまでのやさしげな天皇とは似ても似つかない、地獄の底から響いてくるような声だった。2人はさっきのように、震えながら抱き合った。
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