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こんばんは、幽霊です。名前はまだありません。
名前、覚えていないとかではなくて、本当にまだないんです。
幽霊って死んだ人って事に成っていますが、実は気分の産物です。
幽霊についてご説明いたしましょうね。
幽霊はお化けや妖怪と同じで怖いと云う気分です。人が死んだ際「この人は恨みを残して死んだのだろう」とか「人を憎んで死んだから、死にきれないに違いない」とか。そんな風に思う気持ちが、形もないのにまるで3D画像の様に空気中に僕達を映し出すんです。
一度視覚化されてしまえば無かったことには出来ません。はい、幽霊の出来上がりです。
姿がなくとも、音だけの幽霊や匂いだけの幽霊も居ます。そういう風に作られた幽霊ですね。
誰かを祟ったり呪ったりすることもありますが、それもそういう風に生きている人が作るから、祟るんです・呪うんです。
もっと凄い話をします。吃驚なさると思いますよ。
何故って、人が死ななくても幽霊は作られます。
人が死ぬと幽霊が出来るのではなく、死んだ人が幽霊に成ると思うだけで、幽霊は作られます。
何か理解できない事が起きた時「幽霊の仕業かも知れない」と思っただけで幽霊は作られます。
幽霊とは実に簡単にポコポコと作り出され、忘れられればその瞬間に消え去る存在です。
まあ、そうは云っても現象化するだけの強い気持ち(恐怖)がなければ、幽霊には成らないんですけどね。
そんな風に生きている人の事情で生み出される幽霊ですが、夏に成ると大量生産されます。怪談の盛りですからね。
僕もそういう「幽霊が居るに違いない」と云う環境から生まれた幽霊なので、名前どころか設定すら曖昧で、人が居たら吃驚させる程度の事をして過ごしていました。
そう、彼女に合うまでは。
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