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八月も半分が過ぎた。
僕はまたレストランに来ていた。
ノートパソコンで小説を書いていると、
「また小説書いてるの?」
そう話しかけてきたのはバイト中の理帆だった。僕は頷き、「家だと母さんがうるさくて」と言った。
「あ、この前、塾の帰りに中学の横を通ったらさ」
僕から話題を切り出した。
「ああ、月斗いたでしょ? 練習してるんだよね? バイト終わりに練習してるんだって。私もたまに見に行ってるんだけどね」
と、理帆はあっさりと言った。
大したことではないとでも言うように。
たぶん、理帆には大したことではないんだろう。
所詮、僕と理帆はただ小学校時代からの知り合いなだけだ。月斗と会っていたことを僕に知られても、理帆は何も困らない。
勝手にウジウジしているのは僕だけだ。
「郁也も見に来たら? なんかパス相手がいないのも困るみたいだし。郁也も最近、カラダ動かしてないんでしょ?」
こんな風に気軽に僕に言う理帆は、優しくて残酷だ。
愛想笑いだけを浮かべて頷く僕は、情けないピエロだ。
たぶん、このまま夜に僕は中学のグラウンドに行く。
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