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「まおちゃーん!」
大声で名前を呼ばれた彼女が頭をきょろきょろと動かして、それから最後に俺達のいる教室の窓を振り仰ぐ。
教室の窓から手を振る柊斗とその隣にいる俺に気づいた彼女は、冷たい目で俺達を睨むとばっと勢いよく顔を背けた。
「あ、無視された」
彼女に顔をそらされた柊斗が、俺の隣で不満気にぼやく。
「そりゃ、無視されるだろ」
柊斗に大声で名前を叫ばれた彼女は、隣を歩く友達にからかわれている。
人の迷惑も考えずに自分の衝動だけで彼女の名前を叫んだ柊斗の横顔を、俺は呆れた顔でじっと見つめた。
「あれから、まおちゃんとなんかあんの?」
数日前のこと。柊斗は駅前で大学生っぽい男に絡まれている彼女を助けて、そのままどこかに連れ去った。
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