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彼女が男に絡まれてるのを見つけた柊斗は、部活帰りで俺が隣にいることなんてすっかり忘れてしまったみたいで。
ものすごい怖い顔で、彼女と男の前に飛び込んでいった。
それ以前に彼女からの告白を断ったくせに。まるで大事なものでも奪われたみたいに、目の奥を光らせて。
あのときの柊斗の気迫は、結構凄かった。
柊斗とは中学からの付き合いだけど、基本的にへらへらしているこいつがあんなふうに怒りを顕にするのを初めて見た。
「別に、何もない」
ぼそりと答えて窓の安全柵に両肘をついた柊斗が、ぼんやりと校庭を眺める。
その視線の先を追って確かめなくても、きっとそこには彼女がいるんだろう。
柊斗が彼女を初めて見た翌朝。俺の顔を見るなり傍に駆け寄ってきた柊斗の目は、きらきらと輝いていた。
「なぁ、恭介。昨日、俺、すげー女の子見た」
柊斗が興奮気味にそう言ったときから、俺はお前自身が気づいてない気持ちにちゃんと気づいてんのに。
お前が彼女の姉ちゃんが好きだ、なんてバカなこと言い出すから。
俺はお前の気持ちを知りながらも、彼女から目が離せなくなったんだ。
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