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校庭で友達と話しながら授業が始まるまでの時間を持て余しているふうな彼女が、ちらりとこちらに視線を向ける。
だけど彼女の瞳が映しているのは間違いなく俺ではなくて、隣にいる柊斗で。
両肘をついてぼんやりしている柊斗の横顔を睨みながら、俺はそのことに軽く嫉妬した。
「まおちゃん、可愛いよな」
「は?」
校庭にいる彼女を見つめながらぼそりと言うと、柊斗が過剰反応気味に振り向いて俺を睨む。
横顔に感じる鋭い視線に苦笑いを浮かべた俺は、彼女を見つめたまま「わかりやすっ」と小さく呟いた。
「何がだよ」
「別に」
そのとき、授業の開始を知らせるチャイムが鳴る。
彼女達の前に体育の教師が現れて、俺達の教室にも次の授業の担当教師が入ってくる。
俺は彼女のほうに視線を向けたままの柊斗の肩を押しやると、柊斗の鼻先でぴしゃりと窓を閉めた。
「危なっ」
柊斗がへらりと笑いながら、少し身を引く。
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