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《柊斗》
夕暮れの川原。
家からここまで走ってきた俺は、川岸に下る土手の中腹に寝転がっている、同じ高校の制服の女の子の姿を見つけて足を止めた。
またあんなとこで寝てる。
走るのをやめてなだらかな土手を下ると、眠っている彼女の顔の横にしゃがみ込む。
右腕を瞼の上に載せて、膝丈より短いスカートから伸びたすらりとした脚を川岸に向かって投げ出すように寝転がっている彼女は、気持ちよさそうだけどかなり無防備だ。
「まおちゃん、まおちゃーん」
眠っているまおちゃんの耳元に顔を近づけながらその肩を揺さぶると、彼女が瞼の上に載せた手を退けて眩しそうに僅かに目を開いた。
「こんなとこで寝てたら風邪ひくよ」
川原に吹く風は、夕方になると肌に冷たい。
それにいつも思うんだけど、こんなとこで女の子が暗くなるまで一人で寝てたら絶対危ない。
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