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「あー、古澤柊斗」
眠たそうに手の甲で目を擦ったまおちゃんが、完全に寝起きの声で俺の名前を呼んだ。
寝転んだままぼんやりと無防備に俺を見上げてくるから、目のやり場に困る。
戸惑ってぎこちなく視線を泳がせていると、まおちゃんがそばにしゃがむ俺の腕をつかんでゆっくりと身体を起こした。
「もうそんな時間か」
俺のことなんてどうでもよさそうに、まおちゃんがぽつりと呟く。
「まおちゃん。いつもこんなとこで夕方まで暢気に寝てたら、そのうち変な人に声かけられるよ」
両腕を上げて伸びをするまおちゃんの横顔を眺めながら、ちょっとだけ眉を顰める。
すると伸ばした腕を頭の上で留めた彼女が、怪訝そうに振り向いた。
「変な人って?」
「うーん。あるじゃん、いろいろ。女の子が遅くまでこんなとこで寝てたら危ないって」
心配して言っているのに、まおちゃんは口元を緩めて他人事みたいにクスッと笑うだけだ。
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