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「平気だよ。あたし、お姉ちゃんみたいな美人じゃないもん」
「そういう問題じゃないって。女の子なら誰でも……みたいなやつだっているし」
「それさ、何気にあたしのことディスってるよね?」
「違うって」
ただ、普通に心配してるだけなのに。
意地悪な目をして俺を見たまおちゃんが、傍に放り出していた鞄を拾って立ち上がった。
「まおちゃん、帰るの?」
「うん、帰る。よく寝たし」
小さく頷いたまおちゃんが、ゆったりとした足取りで土手を上り始める。
いつもどこかつかみどころのない彼女は、気まぐれな猫みたいだ。
なかなか簡単には近付けなくて、手が届くところで近付いたと思ったらやっぱり遠い。
そんなまおちゃんに、俺はだいぶ前に告白された。
少し目尻の上がった気の強そうな瞳で俺のことを睨んで。まるで怒っているみたいに好きだ、と伝えられて。その瞬間はものすごくびっくりした。
何も知らなかった俺は、まおちゃんに好きな人のことを相談していたし。年下なんて興味がないと言っていたまおちゃんが俺を好きになる可能性なんて想像したこともなかった。
それにまおちゃんは、出会ってからいつも一方的に声をかけ続けている俺のことを、内心では迷惑がってるんじゃないかと思ってたから。
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