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だけど時間が経つにつれて、気持ちを伝えてくれたときの怒っているみたいなまおちゃんの顔が、ふとした瞬間に頭にちらつくようになった。
まおちゃんにされた告白の言葉も、川原で衝動的に交わしたキスの記憶も。日を追うごとに、不思議なくらいに俺の中で鮮明になっていく。
それなのに当のまおちゃんはといえば、あれから以前にも増して素っ気なくて。いつ顔を合わせても、何事もなかったみたいな態度で俺に接してくる。
あの告白は、まおちゃんが起こした気まぐれだったんだろうか。
こっちはまおちゃんと顔を合わすたびに、告白やキスの感触を思い出して落ち着かない気持ちになってるっていうのに。
しゃがんでまおちゃんの背中を見上げている間に、彼女との距離がどんどん離れていく。
息を吐いて立ち上がると、俺もその背中を追いかけた。
腕を伸ばせば肩に手が届く距離まで追いついたとき、まおちゃんが俺を振り返る。
「これからまだ走んの?」
「うん、今来たとこだから」
「ふぅん」
素っ気無い声で相槌を打ちながら、まおちゃんが後ろ向きに土手を一歩上がる。
彼女が踵から足を下ろそうとしているその場所には、土が掘れたような小さな窪みがあった。
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