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「あ!」
先に気付いた俺が声を上げたけれど、それに気付いていないまおちゃんは、不思議そうに小首を傾げながら踵から地面を踏み込んでしまう。
次の瞬間、彼女のローファーの踵は、俺が予測したとおりに土手の小さな窪みにすっぽりとはまってしまって。足をとられた彼女の身体が、バランスを失ってぐらりと後ろによろけた。
「まおちゃん?」
急いで前に進み出ると、後ろに倒れそうになるまおちゃんの手をつかまえて強く引っ張る。
それから今度は俺のほうに倒れこんできた彼女の細い肩を、両腕でしっかりと抱きとめた。
その反動で、彼女の額がこつんと俺の胸にぶつかってくる。
「大丈夫?」
腕の中のまおちゃんが心配で耳元で声をかけると、彼女がビクリと大きく肩を揺らして、慌てたように身体を後ろにのけぞらせた。
怒ってるみたいに眉を顰めたまおちゃんの頬が、よく見ないと気づかないくらいに赤く染まっているのがわかる。
その顔を見たら、なぜか急に胸がざわざわと変な音をたて始めて。俺は衝動的に、彼女の肩に回していた腕をぎゅっと自分の胸に引き寄せてしまった。
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