284人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっ!何すんの!?」
俺の腕の中でしばらくもがいたまおちゃんが、結構容赦のない力で俺の胸を突き飛ばす。
「まおちゃん、力強っ……」
そんなに思いきり突き飛ばすことないのに。
俺、いちおうまおちゃんのこと助けたつもりだけどな。
でも、つい抱きしめちゃったからプラマイゼロか。
眉尻を下げながら、ちょっと傷ついた目でまおちゃんを見る。
彼女はそんな俺の目をほんの少しの間見つめ返したあと、怒ったようにふいっと顔をそらした。
「年下のくせに、生意気!」
足元に視線を落としながら、まおちゃんがこれまでに何度も聞かされてきたセリフを小さな声で呟く。
そのとき、川から吹いてきた風が俺たちの傍をすーっと通り抜けた。
微かに音をたてて耳元を通り過ぎた風が、俯く彼女の髪を揺らす。
風に乱された彼女の髪の間から、少し赤くなった耳朶が覗いている。
それに気付いた俺の胸は、またざわざわと変な音をたてて鳴り始めた。
まおちゃんに触れたい ────……
不意にそんな衝動に駆られたけれど、下手に手を伸ばしたらきっとまた怒られる。
だから身体の横でぎゅっと拳を握り締めて、彼女に触れたいその衝動を、必死に頑張って押し留めた。
最初のコメントを投稿しよう!