憧憬

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憧憬

“おかけになった番号は、お客様の都合によりお繋ぎできません──…” 二日ほど前からずっと同じ番号に電話をかけ続けているけれど、どれだけかけても聞こえてくるのは抑揚のない、機械的な女声のアナウンス。 この二日間ずっと、三つ年上の大学生の彼氏と連絡がつかない。 何度かけたところで、百パーセント繋がらない。それはわかっていたけれど、最後にもう一度。 念のためにかけてみる。 “おかけになった番号は、お客様の都合により──…” 抑揚のない声がその言葉を繰り返したところで、あたしは自分からプツリと通話を切った。 お客様の都合、ね。 その都合ってやつがどんなものなのか、できたらもっと詳しく具体的に教えてもらいたい。 どうせ、着信拒否にしたんでしょ。 五日ほど前に最後に顔を合わせた年上の彼氏の顔を思い出して顔をしかめる。 優しくオブラートに包んでくれなくたって構わない。 あたしは別に傷付いたりしない。 だからいっそのこと、「あなたの番号は相手に着信拒否されています」と、はっきりきっぱりアナウンスしてくれたほうがこっちだって清々するのに。
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