それでも君を愛せて良かった

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* 「アベル…一体、どこへ行ったんだ……」 アベルの行方はようとして知れず、一週間経ってもみつからないことに、キースは胸に大きな不安を募らせ、がっくりと肩を落とした。 「あいつは金も持ってないし、頼る友達もいないから遠くには行ってない筈だ。 だけど、これだけ探してもみつからないってことは、このあたりにはいないってことだ。 父さん…どこか思い当たる場所はないのかよ。 あいつが好きだった場所とか、なにか思い出の……あ……」 「……ケイン、どうした?」 「父さん…あの人形はあのままなんだな?」 「え?あ…あぁ、あそこにはあれ以来…… で…では、まさか、アベルはあそこに…!?」 「行ってみよう!」 ケインとキースは、地下のあの小部屋に向かって駆け出した。 「アベル…いるのか?」 しかし、地下はしんと静まり、人がいる気配はまるでなかった。 そのことが、二人の不安を余計にかき立てる。 「アベル…」 小さな扉を開き、ランプの明かりで照らし出された光景に、二人は息を飲んだ。 「ア…アベル……な、なんてことだ……」 砕けたファビエンヌの残骸に守られるようにして、その中央には一体の人形が座っていた。 哀しみに満ちた瞳をした人形が… 「う……嘘だ!嘘だ! そ、そんな…そんな馬鹿なことがあるはずないっ……!」 ケインは大きく目を見開き、震える足が小さく後ずさった。 「……ケイン…間違いない… これはアベルだ… 信じられないことだが、これはアベルなんだ…!」 キースは人形の手を掴んでケインの方へ差し出した。 人形の薬指には見覚えのある青い石の指輪がおさまっていた。 「そ、その指輪…! だ…だけど…だけど、それは…」 混乱するケインとは違い、キースはその人形がアベルであることを確信していた。 たとえ、その指に青い指輪がさされてなかったとしても、キースには直感的にそのことがわかっていた。 そこにいるのがただの人形ではなく、アベルだということが… 「アベル…すまなかった。 おまえがそこまで真剣にあの人形のことを愛していたなんて… 私は、ただ、おまえを救いたい一心で… ああすることが正しいことだと…そう信じて、おまえの気持ちを考えていなかった… すまなかった…本当にすまなかった… 許してくれ……アベル…アベルーーー!」 キースは人形を抱き締め、涙を流して絶叫した。 けれど、砕かれて、粉々になった心は…もう二度と元には戻らない… どれほど泣いても… どれほど悔やんでも…もう二度と…… ~fin
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