ジェンマ8.5 ピーチの悪魔の独り言

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ジェンマ8.5 ピーチの悪魔の独り言

 俺はペルシチ。身体能力の高い悪魔、通称ディアボリ・レンタ。まあ、略してディアンタの一魔(ひとり)で、クリソライトのダチ?みたいな?俺とクリソライトは80代の時に知り合ってたから60年は経ったはずだ。60年も経てば、ダチって言ってもいいだろう。  ディアボルス・アラス(翼が生える時期)の時でさえ仮パートナー無しに迎えたクリソライトが、最近パートナーができたみたいで、以外だなと思ったが、ホッともした。しかし、あのパートナーの後輩くんが、大人しくて、いい悪魔すぎて、クリソライトに潰されるんじゃないかと俺はちょっと心配だ。  ああ見えて、クリソライトは怖いやつだからな。昔のことを思い出すだけで、背筋が凍ってしまうほどだ。これは俺が81歳の時の話で、クリソライトがピチピチの80歳の新入生だった頃。俺らディアンタは100歳以下にディアボリス・アラスを迎える者はあまりいなかった。その中に、99歳で翼が生えた先輩がいて、メッチャ自慢してくるし、弱そうな悪魔をいじめることもした。いわゆる、そういう悪魔(イコール、すぐ調子に乗って墓穴(ぼけつ)掘るタイプ)だ。その日、たまたま目を付けられたのがクリソライトなわけで、ヤバイことになってたわー。これはあの先輩の一生の後悔になったかもな。80歳のクリソライトの体は今よりも10センチほど小さく、可愛い感じの悪魔だった。  あの先輩にかられたクリソライトは、最初抵抗はしてなかったが、あの先輩がクリソライトの肩を触ろうとした途端、小さくて可愛い悪魔の刺々しい尻尾のナイフよりも鋭い先端部分が、あの先輩の手を切り落とした。周りの悪魔が反応できないような速さで動いた尻尾に、俺を含めてそこにいた悪魔は動けなくなっていた。クリソライトは悲鳴をあげる先輩の膝の裏を蹴り、転がり落ちる先輩の背中を踏み、可愛い笑顔に可愛い口ぶりでこう言った。 「先輩、すごいですね!僕にもその自慢の翼をよく見させて?」  小首を傾げ、甘えるような声で聞いたクリソライトに、周りの悪魔は息を飲み、踏まれて動けなくなった先輩は激しく震いだした。これは本来ありえない事態だ。翼は魔力の塊と言ってもいいぐらい、魔力の高さの象徴だ。だが、この時あの先輩はクリソライトをなめて、油断したからな。腕が切られた時に動揺したんだろう。あの先輩の背中を踏んだクリソライトは、両手にした手袋をゆっくり外し、次の瞬間、あの先輩の右翼の根っ子を掴み、少しずつ、ゆっくりと時間をかけて、腕力だけで翼を千切っていった。痛みに悲鳴をあげる先輩を見て、瞳を赤くし、楽しそうに悲鳴を味わうクリソライトの姿。その姿を目にした悪魔たちは顔を青くして、見ることしかできなかった。  俺?ああ、俺はというと。あれだ。半分ちぎられてから、クリソライトを止めようとしたが、尻尾でちょっと顔を切られてな… まあ、すぐ治ったけど、命の危機を感じて、見ることだけにした。うん!今思えば「よくぞそう判断した!でかしたぞ自分!」と褒めたいぐらいだ。  翼をゆっくりと片方ちぎった後、クリソライトは手についた血を拭き、先輩の背中から立ち上がり、こう言った。 「翼が生えたのはすごいけど、特別、綺麗な形をしているわけじゃないんですね。あっ、いい歌声でしたよ。」  というセリフを残して、訓練場を去った。  俺ら悪魔の常識では、むやみに殺すのはダメでも、相手が何かをしでかしたら、話は別だ。殺されても文句は言えない。殺されないだけで、ありがたく思えという気持ちだ。そいうクリソライトのパートナーだから、ちょっと心配してたが、最近、あの先輩の翼をちぎったクリソライトが「我慢」ということを身に付けたらしい。それに、まあ俺らの前では普通通りだけど、あの後輩君の前にいるときのクリソライトを見れば、なんとかなるだろうと思えるようになった。 「あいつら、今日初デート行ってたな…明後日どうしてからかおうかなー」  そう思いながら、週末を自分のパートナーとゆっくり過ごしたペルシチでした。 つづく、、、
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