ジェンマ10 初デート編・魔のピクシー マリン

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ジェンマ10 初デート編・魔のピクシー マリン

 メルムの言葉に甘えて、手袋をまじまじと見たクリソライトは急に後ろを向いて、左右を確かめるように周りを見ていた。 「先輩?どうしましたか?」 「あ、、なんでもないよ。コルセットの店に行こうか?」 「私はいいんですが、、先輩は何も買わないんですか?」 「僕はいいよ?それに僕だけ楽しんでいたら、メルムはつまらないでしょ?」 「いいえ、私はっ」 「はい、行こう」  クリソライトはメルムの言葉を遮り、メルムの右手を取って、隣の店に連れて行った。 「あっ!新しいデザインだ!」  メルムは新発売のコルセットを見て興奮したのか、普通の丁寧な話し方ではなく、砕けた話し方をしていた。 「フフ、本当に好きなんだね」 「はい!私見て回ってもいいですか?」 「いってら!あっ僕は少し用事があるから、ちょっとだけ外すね」 「?はい」  クリソライトはそう言って、すぐ姿を消した。 `手袋…やはり買いたいのあったかな?`  メルムは少し考えてからコルセットに視線を戻し、キラキラとした目で店内を回っていた。 *** 「先輩…どこに行ってたのかな?」  新しいコルセットを3つも買っちゃったメルムは、店の前でクリソライトを待っていた。 `あぁ、、買いすぎたかな?新しいコルセットに目が眩んだわ、、金貨4枚…` 「あっメルム!こっちこっち!」  メルムは自分を呼んだクリソライトの声の方へと顔を向けると、そこにはキラキラとした笑顔をしながら、両手に飲み物を持ち、自分のところへと走って来るクリソライトがいた。 「はい、これ!魔植(ましょく)の花びらを乾燥させた紅茶だよ。フローラルアイスティー。もうすぐ秋だけど、まだ夏だからね」 「あ、ありがとうございます」 「買いたいもの買った?」 「はい。買いました」 「んん、、時間まだあるね。お腹すいた?ちょっと早いけど、昼食にする?」 「私はどっちでも大丈夫です」 「…じゃあ、ゆっくり見回りながら、グルメ・ストリートに向かおうか?」 「はい」  自分の右隣に歩くクリソライトを見て、メルムは少し違和感を感じた。不思議そうに自分を見つめるメルムの視線を感じて、クリソライトはメルムに視線を向け、目で`どうしたの?`と聞いてきた。 「なんか、今日のクリソライト先輩は普通と少し違いますね?」 「えっ?なになに?普通より可愛いとか、それともかっこいの?」  ドヤ顔でそう聞いてくるクリソライトを少し観察し、`わかった`という顔をしたメルム。 「…目線の位置?ですか?」 「アハハ…そこかい…」 「普通より目が近い気がします」 ギクッ  メルムにそう言われて、クリソライトの表情は少し固まった。メルムはそれに気づかず、クリソライトを観察した末、クリソライトの足元をジーと見つめていた。 「もおお!そんなに見ないでくれよ!」 「あっ、すみません…」  ムスッとなったクリソライトは、メルムから顔をそらし、少し間を開けてから小さい声で言った。 「…僕だって、君との身長の差とか、少しは気にしてるからね。…それに、そんなにジロジロ見られたら、恥ずかしいから…僕、張り切っちゃって…かっこ悪いじゃないか…」  クリソライトが純粋に照れてる姿を見たメルムは、自分の顔に熱が上るのを感じた。 `えっ、何これ??、、ギャップ萌えってやつ???今日の先輩めっちゃ可愛いんだけど、、、`  いつまでたっても黙り込んだメルムに、クリソライトはチラッとメルムの顔を覗く。メルムの顔を見たクリソライトは、自分の笑いに堪えれず吹き出してしまった。 「フッアハハハハ、、なに?なんで君の方が僕より顔を赤くしてるの?アハハ、可笑しいよ、メルム アハハ」  笑いながらそう言ったクリソライトを見て、メルムもつられて吹き出してしまった。 「フッ、確かに。私、可笑しいですね」  いい雰囲気になった二魔(ふたり)は、グルメ・ストリートにゆっくりと話しながら、歩いていった。選んだレストランは肉料理の専門店。クラシックな木造の建物の店は高ランクの魔鹿を材料とした様々な料理を看板に上げている。ちなみに、この店では魔鹿ステーキが定番だ。二魔(ふたり)は昼食を済ませ、セントラル・シティを回っていた。文芸ストリート、芸術ストリート、魔石ストリート、そして宿ストリートとグルメ・ストリートの間にあるでかい公園に寄って、そこで少し休もうとした時、クリソライトに声をかけた者がいた。 「あら?クリスちゃんじゃない?」 「あっ、マリン!久しぶりだね」 「そうよ!いつまで待っても、クリスちゃん全然こないんだからっ ムム」 「アハハ、ごめんごめん。また来るよ」  クリソライトに声をかけたのはマリンと呼ばれた、魔のピクシーの女性だった。35センチという大きさで、可愛いらしいその姿は、黒いトンボの羽に額に生えた2本角がダークの可愛さを表現している。魔のピクシーは魔族の種族の一つであり、寿命の長い生き物だ。  普段とは違う、自然に知り合いと会話しているクリソライトを見て、メルムは少し寂しいと同時に、こんなクリソライトを見ることができて嬉しいと思った。 `お預け…先輩、今日も何もしてこないね…私は..何がしたいんだろう?先輩を待つばかりでは、ダメだよね?でも、、お預け…先輩、、怒るかな?`  一人で悩むメルムをよそに、クリソライトとマリンの会話は終わりに近づく。 「へー、あの子なの?」 「そうだよ。可愛いでしょ?」 「嫌だな〜、クリスちゃんったら、これ私が可愛いって言ったらダメなやつでしょ?」 「やはり、マリンは僕をわかってるね。アハハ」 「そうか、、パートナーねー また店においでえ。あとで話聞かせてね?」 「そうだね。近いうちに顔出すよ。じゃあ、またねマリン」 「クリスちゃんも、元気でね!店で待ってるよ」 「うん」  去ってゆくマリンを見て、メルムはクリソライトに話しかけた。 「お知り合いですか?」 「そうだよ」 「店ってなんのお店か聞いてもいいでしょうか?」 「んんん、えへへ、、今は秘密!後で教えるね」  クリソライトはそう言って、さりげなくメルムの右手を握った。メルムは、前を向くクリソライトの横顔を見て、固唾をを飲み、覚悟を決めた目で、自分の手を握ったクリソライトの手に、自分から指を絡ませた。びっくりしたクリソライトは、目を丸くし、手に視線を落としてからメルムの方へと視線を向けた。 「あの、、先輩、こっちに行きましょうか?」  メルムはクリソライトの手を取り、自分から道を案内した。 つづく、、、
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