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ジェンマ12 初デート編・セーフワード
クリソライトは地面に座ったメルムを見て、メルムの頸に当てた右手を顎へと滑らせ、メルムの顔を上へと向かせた。左右異色の瞳は熱に燃え同色の赤に輝く。交差する二魔の赤い瞳。
「`おしおき`する前に、少し話そうか?」
クリソライトはそう言って、メルムの手を引き、立ち上がらせる。近くにある東家に行き、メルムをベンチに座らせた。メルムは逆らうことなく、そのまま腰をベンチに落として、座る。メルムの隣に座ろうとしたクリソライトは、何かを感じたかのように後ろに振り返り周りを確かめた。
「はあ、、」
周りを見回した後、ため息を吐いたクリソライトは、ある魔法を詠唱した。聞こえないような小さい声で口を動かしたクリソライトの身体に文字が流れるように現れ始めた。その文字は東家を囲むように体から地面を伝い、淡く発光し、周りに輝き始めた。詠唱が終わった途端淡く光った文字が消え、残ったのは二魔のいる東屋を囲む薄い半円形の膜だった。
「先輩?」
クリソライトの行動に疑問を思ったメルムはクリソライトの方へと顔を向けた。
「うん。ネズミがいるみたいだから…まあ、小さいけど結界を張った」
「ネズミ?ですか?」
「うん。僕、盗み聞きするネズミ嫌いなんだ」
そう言って、クリソライトはメルムに笑顔を見せる。クリソライトはメルムの右隣に腰を落とし、メルムの右手を取り強く握る。数秒、間をおいて、メルムの方へと顔を向けたクリソライトは、メルムの目をまっすぐに見つめる。冷静さを取り戻した黄玉の瞳とオッドアイに戻ったメルムの瞳。
「僕、ドミナントでサディストなんだ。だから、この先、僕たちがキス以上の行為をしたら、SMプレイ、、んん、、僕のS性質が出る確率が高い」
「…」
「だって、僕、君の困った顔を見るだけで興奮するもん。慣れない`我慢`まで覚えて…」
「…」
`この悪魔、、何言ってるんだ???`
「メルム?」
「 …我慢してるんですか?」
「えっ?我慢してるつもりだけど?」
「…」
内心少し呆れ気味のメルム。
「僕、我慢漏れした??ちゃんと我慢してたはずだけど…あれ??」
「我慢って言ってますけど…先輩、楽しんでません?」
「ん?君の反応見て楽しんでるよ?それと僕の我慢と何の関係が?」
「…はい。何もないです…」
メルムを見て、小首を傾げたクリソライトはまた話しを続けた。
「それで、SMプレイだけど、君はどう思う?」
「…私は…SMプレイ?のことはあまりわかりませんが、抵抗はないんじゃないかと思います」
「へー、僕とこれからプレイしても抵抗はない?」
「そうですね…ないと思いますが、先輩…一つ聞いても…?」
「なに?」
「私…上…ですよね?」
途中で何かに気づいたメルムは、自信なさげでクリソライトに聞いたが、返ってくるのは光り輝く可愛い笑顔だけだった。冷たい汗が背中に流れたメルムは、無表情で焦っていた。
「先輩???えっ、私、下ですか??」
「アハハ、なにをゆうのメルム?上か下かと聞かれたら、君は下だよ?けど、僕は下になる抵抗はないからね」
「じゃ…」
「でも。今の君には、実力やスキル、それにS性質の僕を抱けることはまだはやいと思うよ?」
「っでも…」
「それとも、キスだけでとろけた顔をする君に僕を抱ける自信あるの?」
「…」
メルムはクリソライトの言葉に返事することはできなかった。
「…でも、私…後ろをいじったことないし…できる自信がありません」
「フフ、それでいいよ。君の初めては僕がもらうから…」
クリソライトはフフと笑い、優しい笑顔を浮かべながら、ベンチから立ち上がり、座るメルムの前に立ち、その頭をポンポンと撫でた。
「メルム。返事は?」
「…よろしくお願いします」
メルムはコクリと頷き、小さな声でそう答えた。
「いい子」
そう答えたメルムにクリソライトは満足げな声で返事し、メルムの頭をそのまま優しく撫でた。
***
「そう決まれば、セーフワード決めよっか?」
クリソライトはまたベンチに座り、話を切り出した。
「セーフ…ワード…ですか?」
「うん。君はSMプレイのこと何にも知らないし、好みとかまだわからないから、僕が少しずつ教えるよ。と、セーフワードは君がプレイ中に耐えられなかったり、嫌で無理と思う時に言う言葉だよ。君がその言葉を言うと、僕は必ずプレイをやめると約束する」
「…」
`無理って、、本気で耐えられないようなことをされるの???マジで??なんか怖いんだけど??`
「メルム…何想像してるの…?」
「あっ、いいえ…」
血の気が引けた顔をするメルムを見て、クリソライトは`失礼なっ`という顔をして問う。
「言っておくけど、僕ちゃんと講義受けてるからね。SMの店に通って、ちゃんと勉強してるよ?」
「お店?」
「うん。あぁ、さっき会った魔のピクシー、マリンの店だよ。さっき、僕に何の店って聞いたでしょ?」
「…」
`…SMのお店だったんだ…`
「だから、今はセーフワード決めよ?」
「そうですね…じゃ、「マギョ」はどうですか?」
「…魔魚…でいいの…?」
「はい。私、魔魚料理好きですし、魔魚なら言いやすいと思いますが…ダメ、ですか?」
「…そう?僕はどっちでもいいよ。君が決めて…」
「はい。セーフワードは魔魚にします」
「…うん。分かった。魔魚…で決定ね…」
`もうちょっと普通なワードにして欲しかったけど「ストップ」「レッド」とかああいうの…僕、魔魚に呪われたかな??前、好きだけど苦手って言ったから???`
少し虚しい気持ちになったクリソライトでした。
つづく、、、
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