ジェンマ・ハート 宝石の心

ジェンマ２ 悪魔と悪魔学校

　魔界であるこの世界は魔王を頂点とし、魔族の中でも知恵を持つ魔族たちは種族ごとに王が存在し、その王たちは魔王の下に位置している。魔族の一つである悪魔は、悪魔王（ディアボリ・レクス）を含め、六段階の階級がある。ディアボリ・レクス（悪魔王）、プレティオスム・クラス（尊級）、ウルトラ・クラス（超級）、アルトゥム・クラス（高級）、メディエタス・クラス（中級）、そして最後にエビエクトス・クラス（低級）の六つである。悪魔族の階級制度は特殊で、家名が代々受け継がれていてもクラスは代々受け継がれるものではなく、当主によっては代ごとに変わってゆく。例えば、現当主はアルトゥム・クラス(高級)とする。次の当主がウルトラ・クラス(超級)であれば、家名のクラスが上がり、逆にメディエタス・クラス(中級)であれば、家名のクラスが下がってゆく。
　これらの階級は、悪魔個々に与えられていて、その悪魔が死ぬ時まで上へと登ることができる。悪魔は80歳になって初めて、家名の階級から自立し自力で自分の階級を持つことになる。そして、魔法特化の生き者である悪魔たちの階級のスタートラインとなるのは、持っている魔力量であり、それを付け足すように学校での成績や発明、卒業後の貢献と善悪問わずの実力で更新され続ける。実力主義の制度と言ってもいいだろう。
　家名と同じく家業も代々受け継がれるものではないが、自由主義者の多い悪魔が現家業を継いだとしても、それはやりたいからやっただけで無理やり継がせる家は少ない。だからなのか、悪魔は自分の家名をあまり名乗らない。名乗るのは自分の名前だけだ。
　悪魔学校は80歳から220歳の悪魔が通う学校であり、魔法の知識、戦いの実技、基礎武術と基礎知識になる項目をメインに、興味によってはそれ以外の幅広い分野の授業を選ぶことができ、学ぶことができる。若き悪魔たちはこの学校で階級や経験値だけではなく、『ディアボルス・アラス』を迎え、パートナー探しもこの140年間のなかでする。
　ディアボルス・アラス。90歳から120歳の間で起こる翼が生える時期は、悪魔たちの魔生(じんせい)の中、一番大切なことと言える出来事だ。悪魔は、角と尻尾を生まれた時から持っていて、その成長は翼が生えるとともに急激に伸び、完全体へと進化する。ディアボルス・アラスは「悪魔の翼」という意味を持ち、翼が生えることにおいて肝心になるのは、完全体への急進化では無く、翼が生えることで悪魔の魔力が劇的な変化を起こし、増大することにある。魔力を基準としている悪魔階級での魔力増大は、悪魔にとって、これこそが真の目的である。
　ディアボルス・アラスは悪魔個々によって、生える期間と痛みは違ってくるが、一つの共通点は翼が背中から出る間の激痛だ。大抵の悪魔は、ディアボルス・アラスを迎えるために仮パートナーやパートナーを探す。それは、ディアボルス・アラスで体験するであろう、激痛から気を紛らわすために、セックスをするからだ。悪魔のパートナーは男女関係なくなれる。パートナー成立は、成立した後も別れることができ、何度でもパートナーを探すことができる。300年間、同じパートナーを持つことで初めて真のパートナーとなり、体にシンボルが刻まれ、互いの隠し名を知ることができる。
　悪魔には稀に身体能力を普通以上に高く持って、生まれる個体がいる。クリソライトはその一魔(ひとり)で、武術に長けている悪魔の一魔(ひとり)である。
　悪魔学校のクラス別は50年ごとに分けられ、３つの学年がある。その50年を10年ごとに分けA〜Eクラスを決め、10年ごとに分けられたものをさらに1年ごとに分け1〜10番を決める。80歳から129歳は一年、130歳から179歳は二年、そして180歳から220歳は三年で、A〜Eクラス別は、80・130・180歳はEクラスで120と170歳はAクラス。最後の1〜10は10年の1年ごと、つまり年齢の細かい数字である。例えば、85歳の悪魔は、一年のEクラス５番になり、略して一年のE ―5クラスと呼ぶ。クリソライトは二年のD−2だったので、年齢142歳ということになる。

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　パートナー成立したばかりのクリソライトとメルムは手を繋ぎながら、中庭から学校の中央ホールへ行き、そこで別れた。
「じゃあ、また明日ね。メルム」
　ニコッと笑い、クリソライトはメルムの手を放した。手をやっと放されたメルムは自分の視線を手に向けた後、視線をクリソライトへと戻した。
「..はい。また明日です。」
　中央ホールで挨拶をした後、クリソライトは満面な笑みで、手を大きく振り、学校の外へと向かった。手を振ったクリソライトを見て、メルムも自分の手を半上げにし、小さく手を振り返し、クリソライトの姿が見えなくなってから、自分の部屋へと向かった。

つづく、、