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ジェンマ3 ワインの悪魔と噂好きの同居魔
メルムは肩の上に切り揃えた、まっすぐな艶のある薄いバイオレット色の髪を揺らしながら、中央ホールから寮にある自分の部屋へ歩きだした。左右異色のオッドアイの上に前髪が右から左へと斜めに切られ、髪の生え際に4本のツノが左右に2本ずつ生えていた。左右に生えていた2本ずつのツノは縦に並び、上の2本が大きめで下の2本は小さめのサイズだった。異色になっているのは、メルムの目だけではなく、左右に分かれたツノも異色になっている。右目と左ツノ2本が深いワイン色になっていて、反対側の左目と右ツノはシルバー色になっている。メルムは整っていて可愛い顔立ちを持つクリソライトより地味な顔立ちだった。目は切れ長で、眼球は可愛い丸い形ではなく、縦長になっていて、顔にはそばかすができていた。そんな顔に一番印象的なのは自分のワインとシルバー色になっているオッドアイとツノ以外ないだろうとメルム自身も思っている。
メルムは自分の部屋へ続く廊下を歩き、さっきまでクリソライトの手と繋がれた自分の手に視線を向けた。
`男の手だったな、、可愛い顔に似合わない硬い手、、`
手袋越しでも感じられるクリソライトの手の感触を思い出しながら、歩くメルムは知らないうちに自分の部屋の前に着いた。ドアノブに手をかけ、部屋へ入ろうとした瞬間、後ろからドボドボとした足音が聞こえたと思えば、メルムの背中を勢いよく押し、部屋へと一緒に入った者がいた。
「ね!ね!さっきのアレって何?!」
メルムの背中からそう言葉を投げたのは、黄土色のボサボサ髪をしている悪魔だった。その悪魔はメガネ越しから見えるレモン色の目を好奇心あふれる眼差しでキラキラさせ、メルムを見ていた。
「シトレア、後ろから急に押さないでほしいです。びっくりします。」
メルムは背中にいる自分の同居魔であるシトレアと呼んだ悪魔に向き合って、言った。
「そんなことより!何だったんだ?教えろよ!気になるじゃないか?!」
食いつくような目でメルムを見ているシトレアは、自称噂好きと名高い悪魔としての好奇心満ちた明るい表情で新しい情報に耳をたてた。
「…何で知っているんですか?」
グイグイと押し聞かれるメルムは、疑問に思ったことを口に出した。
「…?何で?って、アハハ、可笑しなことを言うねぇメルムは。中庭にいるみんななら、知ってると思うけど、、?何か?」
シトレアは不意を突かれた表情で返事しながら、笑った。
`ですよね…中庭でしたもんね…`
メルムは心中にそう思った。
「で?何だったんだ?」
シトレアは急かすようにメルムにもう一度聞いた。
「..パートナーに誘われまして、、パートナー成立しました。」
「へー、あのクリソライト先輩とかー」
シトレアはウンウンと頷きながら、そう言った。
「何か、クリソライト先輩のこと知っていますか?」
シトレアの言葉を聞いたメルムは、クリソライトについて何か知ってるかと聞いた。
「いや?何も?あっ、おめでとう」
シトレアは首を傾げ、返事した。
「。。。。。」
`知らなかったなら「あの」とかつけなくてもいいんじゃないか?!`
メルムはそう思いながら、呆れた顔をシトレアに向けた。メルムの顔を見たシトレアは慌てて言った。
「いやだなーメルム、そんな顔をしないでくれよ!何も知らないわけじゃないよ?!この噂好きの私に聞いてない噂なんてない!」
シトレアは焦った顔で、胸を張ってそう宣言した。
「…本当ですか?」
信じてない顔をしたメルムを見て、シトレアは焦っていた。
「本当だって!ほら、クリソライト先輩って武道派の悪魔でしょ?」
「それなら、私も知っています。」
みんなが知っているような情報を口にしたシトラスにメルムは棒読みで返事した。
「え、、と、、あっ!あれだあれ!あしたの朝5、6時にD訓練場に行けば、何か分かるかも!」
思い出したような顔で、右拳をポンと左手に叩いて、シトレアは言った。
「Dの訓練場ですか?そこで、何かありますか?」
「それは明日の楽しみだよ!自分で見てきて!」
シトレアはからかうような笑みでそれだけを言って、話をクリソライトから、最近食堂で「噂」になっている裏メニューに移した。
つづく、、
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